「見学会の予約は取れているのに、その月の契約にはつながっていない」。注文住宅の広告で、毎月のように出る話です。注文住宅は、広告をクリックしてから契約までに数か月から1年以上かかります。月次のレポートで「今月の広告費÷今月の契約」を見ても、何も分かりません。さらに困るのは、自動入札に契約を学習させようとしても、契約が決まる頃には広告にデータを戻せる期限が切れていることです。この記事では、注文住宅の長い検討期間を前提に、どの段階を成果として数え、どう価値を付け、どう評価するかを、計算例と設定の手順で書きます。
この記事の結論
- 01Google広告にオフラインで成果を戻せるのは、クリックから90日以内。契約の多くはその後に決まるので、契約だけを成果にすると学習の材料がほとんど届かない。
- 02期限内に出そろう「商談(プラン提案)」を主な成果にし、来場予約・来場・資料請求には、契約までの割合から計算した価値を付ける。資料請求とプラン提案では、1件の価値が約15倍違う。
- 03広告の評価は「月」ではなくクリックした月ごとの集団(コホート)で追う。90日時点の契約で判断すると、CPOは実際の約3倍に見える。
注文住宅の広告が難しいのは「検討期間」のせい
注文住宅は、思い立ってから入居までに10か月〜2年程度かかると言われます。土地探しから始める人はさらに長くなります。広告から見ると、次の順に進みます。
- 資料請求・来場予約:広告をクリックしたその日か数日以内。
- 来場(展示場・見学会・モデルハウス):予約から1〜2週間後が多い。
- 商談(プラン提案・見積り):来場から数週間〜2か月。
- 契約(請負契約):提案から数か月。土地の決済や住宅ローンの審査を待つと半年以上。
展示場はいまも依頼先探しの中心です。アットホームが2024年9月に公表した調査(過去2年以内に注文住宅を購入した400人)では、工務店・ハウスメーカーの探し方として「住宅展示場を訪問する」が54.0%でした。検索広告の役目は、検討を始めた人をこの「来場」まで連れてくることだと考えると、設計がすっきりします。
市場そのものは縮んでいます。国土交通省の建築着工統計で、2024年の持家(注文住宅を中心とした自分で住む家)の着工は約21.8万戸、前年比2.8%減で3年連続の減少でした。限られた検討者を各社で取り合う構図なので、1件の問い合わせの値段は上がりやすく、どの問い合わせに、いくらまで払うかの精度が利益を左右します。
契約は、広告に戻せる期限に間に合わない
顧客管理ツールにある「来場」「商談」「契約」のデータを、広告のクリックID(gclid)と一緒にGoogle広告へ戻すと、自動入札は「どの検索が契約につながったか」を学習できます。ここに期限があります。
クリックIDでの取り込み
クリックから最長90日以内
Googleのヘルプでは、最後のクリックから90日を超えた成果は取り込まれないとされています。コンバージョンの計測期間も最長90日です。
リードの拡張コンバージョン
最長63日以内
メールアドレス等で照合する方式は、さらに短い期限です。顧客管理ツールの連携機能によっては、もっと短いこともあります。

どのくらい間に合わないかを、段階ごとの日数で見ます。クリックから各段階までの日数の中央値を、来場10日・商談35日・契約130日と置き、ばらつきを持たせて計算した例です(数値は説明用の仮の数字です。自社の顧客管理ツールの日付で置き換えてください)。
| 段階 | 日数の中央値 | 30日までに | 63日までに | 90日までに | 180日までに |
|---|---|---|---|---|---|
| 来場 | 10日 | 91.5% | 98.9% | 99.7% | 99.9%以上 |
| 商談(プラン提案) | 35日 | 42.4% | 76.9% | 88.1% | 98.0% |
| 契約 | 130日 | 3.3% | 18.3% | 32.3% | 65.8% |
この例では、90日の期限までに出そろう契約は約3割です。7割の契約は、クリックIDを持っていても広告に戻せません。リードの拡張コンバージョンの63日で見ると、2割を切ります。契約だけを成果にした自動入札は、全体の3割の、しかも「早く決まった人」だけを見て学習することになります。
早く決まる人は、土地がすでにあって建て替えや予算の決まっている人に偏りがちです。土地探しから始める人や、何社も比べてから決める人は、データとして入札に届きません。結果として、自動入札は「早く決まる人に似た人」ばかりを追うようになります。
主な成果は「商談(プラン提案)」にする
期限内に出そろい、しかも契約にいちばん近いのが商談です。当社では、注文住宅のように検討期間の長い商材では、次の順で考えます。
| 段階 | 90日以内に出そろう割合 | 契約との近さ | 月の件数 | 扱い |
|---|---|---|---|---|
| 契約 | 約3割 | そのもの | 少ない | 戻せる分は戻す。評価はコホートで |
| 商談(プラン提案) | 約9割 | 近い | 契約の約3倍 | 主な成果(入札の対象) |
| 来場 | ほぼ全部 | 中間 | 商談の約2倍 | 価値を付けて入札の対象に |
| 来場予約 | 当日 | 中間 | 多い | 価値を付けて入札の対象に |
| 資料請求 | 当日 | 遠い | いちばん多い | 低い価値を付けるか、観測用 |
「商談」は、会社によって定義が揺れやすい段階です。「間取りプランと概算見積りを提示した」のように、営業担当の判断ではなく事実で決まる定義にしておくと、月ごとのぶれが小さくなります。顧客管理ツールの項目も、日付が自動で残る形にします。
中間の段階で学習させることのリスクは、MCV(中間コンバージョン)で学習させる記事で詳しく書いています。商談は、人が会って提案した後の段階なので、ボタンのクリックのような中間地点とは違い、質の劣化が起きにくいのが利点です。
段階ごとに「価値」を付ける
来場予約や資料請求も入札の対象に入れる場合は、全部を同じ1件として数えません。段階ごとに、そこから契約まで進む割合を出し、価値を付けます。
段階の価値 = その段階から契約までの割合 × 1棟の粗利
許容CPA = 段階の価値 × 広告に回してよい割合
1棟の粗利を660万円(請負3,000万円・粗利率22%)、広告に回してよい割合を10%とし、段階の間の割合を次のように置いた例です(数値は説明用の仮の数字です)。来場予約→来場70%、資料請求→来場15%、来場→プラン提案45%、プラン提案→契約35%。
| 段階 | 契約までの割合 | 計算 | 1件の価値 | 許容CPA(10%) |
|---|---|---|---|---|
| 資料請求 | 2.36% | 15% × 45% × 35% | 約155,900円 | 約15,600円 |
| 来場予約 | 11.0% | 70% × 45% × 35% | 約727,700円 | 約72,800円 |
| 来場 | 15.75% | 45% × 35% | 1,039,500円 | 約104,000円 |
| プラン提案 | 35% | 35% | 2,310,000円 | 231,000円 |
この価値をコンバージョンアクションごとに設定し、入札は目標ROAS(価値の合計を最大にする方式)にします。こうしておけば、自動入札は「資料請求は安く大量に取れるが価値が低い」「来場予約は高いが価値も高い」を区別して入札します。
価値の更新と、二重計上の防ぎ方
価値は、四半期に1回は実績で更新します。1人のお客様が資料請求→来場予約→来場→提案と進むと、同じ人の成果が4回届きます。全部を入札の対象にすると、進んだ人ほど何重にも数えられます。対策は次の2つのどちらかです。
- 後の段階の価値を「差分」にする:来場予約で727,700円を送ったなら、来場では差分の約311,900円、提案では差分の約1,270,500円を送る。合計が最終の段階の価値と一致するようにします。
- 入札の対象は1〜2段階に絞る:来場予約と商談だけを入札の対象にし、ほかはサブのアクションにして観測用に回す。設定がシンプルで、事故が少ない方法です。
広告の評価は「クリックした月」のコホートで追う
注文住宅の広告を月次で評価すると、ほぼ確実に判断を誤ります。4月にクリックした人の契約は、早くても7月以降に出てくるからです。評価は、クリックした月ごとの集団(コホート)で、時間をかけて追います。
ある月の広告費40万円で、来場予約8件・資料請求12件が取れたとします。前の章の割合で計算すると、この月のコホートからは最終的に約1.17棟の契約が見込めます。
| いつ評価するか | 見えている契約 | 見えている商談 | その時点のCPO |
|---|---|---|---|
| クリックから90日の時点 | 約0.38棟 | 約2.9件 | 約106万円 |
| 最終(1年以上たって) | 約1.17棟 | 約3.3件 | 約34万円 |
90日の時点で契約を数えると、CPO(契約1件あたりの広告費)は約106万円で、1棟あたりの上限66万円を大きく超えて「赤字の月」に見えます。最終的には約34万円で、上限の半分程度です。3倍の差は、広告の良し悪しではなく、見るタイミングの差です。この時点で予算を絞ると、半年後の契約を自分で減らすことになります。
実務では、商談の数で先に判断します。商談は90日でほぼ出そろうので、「クリック月ごとの商談単価」を許容値(この例では提案1件231,000円)と比べ、契約は答え合わせとして後から追います。スプレッドシートなら、顧客管理ツールから「最初のクリック日・来場日・提案日・契約日」の4列を出し、クリック月を行、経過月を列にした表を作ると、コホートが一目で見えます。
予算を動かす時の判断ルール
コホートで見ると決めても、毎月の予算の判断は待ってくれません。当社では、次のように「どの数字で、いつ判断するか」を先に決めておきます。
- クリックから30日:来場の件数と来場単価を見る。来場は30日で9割が出そろうので、ここで大きく外れていれば入口かキーワードの問題です。
- クリックから90日:商談の件数と商談単価を、許容値と比べる。予算を増やすか減らすかは、この数字で決めます。
- クリックから6〜12か月:契約で答え合わせをし、段階ごとの割合(来場→提案、提案→契約)を更新する。更新した割合で、価値と許容CPAを計算し直します。
時間帯と曜日は、成果の種類ごとに分けて見る
注文住宅の問い合わせは、夜や週末に入ることが多い商材です。仕事を終えてから家族で調べる人が多いからです。ここで、電話とフォームを混ぜて時間帯を評価すると判断を誤ります。
受託先(来店・訪問型サービス)の例ですが、時間帯ごとの広告の実績と問い合わせのデータを突き合わせたところ、20時以降は電話の受付時間外で、費用対効果がゼロでした。一方、8〜19時の間では時間帯による差はありませんでした。電話が主な入口の業態では、受付時間外に配信しても、広告費だけが出ていきます。
注文住宅では、夜に入るのはフォームの来場予約が中心で、電話は営業時間内に集中する、という分かれ方が多いはずです。確認の手順は次のとおりです。
- 成果の種類(電話・来場予約・資料請求)ごとに、時間帯別の件数とCPAを出す。Google広告の「時間帯」の分割と、コンバージョンアクションの分割を組み合わせます。
- 受付時間外の電話は、留守番電話や翌日の折り返しで何件が商談になったかを確認する。ゼロなら、その時間帯は電話番号を出さない広告に切り替えます。
- 夜のフォームの来場予約が、昼と同じ割合で来場しているかを見る。来場率が同じなら、夜の配信は止めずに残します。
キーワードは検討の段階ごとに分け、段階ごとに価値を見る
段階ごとの価値を付けると、キーワードの評価も変わります。注文住宅の検索は、検討の段階によって、取れる成果の種類がはっきり分かれるからです。
- 依頼先を探す段階(地域名×注文住宅・工務店・ハウスメーカー):来場予約の割合が高い。価値の高い成果が出やすく、主力にする群です。
- 建て方が決まっている段階(平屋・二世帯・高気密高断熱など):資料請求が多いが、来場まで進むと商談化率は高い。完成見学会の入口と組み合わせると強い群です。
- 情報を集めている段階(注文住宅 費用・相場・流れ):資料請求が中心で、来場までの割合は低い。クリック単価が安く件数は出るので、件数で評価すると過大評価されやすい群です。
キャンペーンをこの段階で分けておき、群ごとに「価値の合計÷広告費」を出して比べます。件数で見ると情報収集の群がいちばん安く見えても、価値で見ると依頼先探しの群がいちばん効率が良い、ということがよく起きます。予算は価値の効率が高い群から順に寄せ、情報収集の群は、資料請求の後の来場率が上がる施策(見学会の案内メールなど)とセットで残します。
検索語句のレポートは、週に1回、群ごとに見ます。先回りで除外キーワードを入れるのではなく、実際に費用が出て価値の付く成果が1件もない語句だけを除外していきます。
見学会と来場予約の入口を作る
検索広告から来場まで連れてくるには、LPの入口を「今週末の見学会」「完成見学会の予約」のように具体的にするのが効きます。来場の価値は資料請求の約7倍あるので、入口の設計で来場予約の割合を上げることが、広告の改善そのものになります。
入口ごとにコンバージョンを分ける
フォームを1つにまとめていると、資料請求と来場予約が同じ1件になります。「来場予約」「資料請求」「土地探しの相談」をそれぞれ別のコンバージョンアクションにし、前の章の価値を付けます。サンクスページを分けるか、フォームの選択項目でタグを分けます。
見学会の日程は、広告文とLPで一致させる
見学会の日程を広告文に入れる場合、終わった見学会の告知が残ると、クリックされても予約できず、費用だけが出ます。日程の入った広告文やLPの文言は、開催日が過ぎたら自動で止まるように、広告のスケジュール設定かカスタマイザーで管理します。手作業での差し替えは、繁忙期ほど漏れます。
工務店の予算を年間の目標棟数から逆算する方法と、キーワードの分け方は、工務店の広告の記事で書いています。
運用で実際に起きる落とし穴
注文住宅のアカウントで多い失敗
- 来場予約のフォームで、クリックIDを保存していない:問い合わせの時点でgclidを隠し項目で受け取り、顧客管理ツールに残しておかないと、後から商談や契約を広告に紐付けることはできません。
- 取り込みを月1回にまとめている:月末にまとめて戻すと、自動入札にとっては成果が来ない日と急にまとめて来る日ができ、学習が不安定になります。毎日戻します。
- 成果の定義を途中で変えて、前後の数字を比べている:資料請求から商談へ成果を切り替えると、件数は大きく減って見えます。切り替えの前に、何の件数で評価するかを関係者とそろえておきます。
- コンバージョンアクションを追加した後、入札の対象を確認していない:Google広告では、アクションを追加したりカテゴリを変えたりすると、そのカテゴリの既定の目標が入札の対象として戻ることがあります。追加したら、キャンペーンごとの目標を全件確認し直します。
- 性能や価格の表現に根拠が添えられていない:「1位」「最安」、坪単価、断熱・気密の数値は、根拠と定義をセットで書きます。土地とセットの広告には、不動産の表示に関する公正競争規約の表示ルールもかかります。
チェックリスト
- 顧客管理ツールで、来場・提案・契約の日付と広告のクリックIDが残っているか
- クリックから各段階までの日数の分布を出し、90日以内に何割が出そろうかを確かめたか
- 主な成果を、期限内に出そろう段階(商談・プラン提案)にしているか
- 「商談」の定義を、営業の判断ではなく事実で決めているか
- 来場予約・来場・資料請求に、契約までの割合から計算した価値を付けているか
- 同じ人の成果を何重にも数えないよう、差分の価値か入札の対象の絞り込みをしているか
- 価値を四半期ごとに実績で更新しているか
- 評価を月次ではなく、クリック月ごとのコホートで追っているか
- 時間帯の評価を、電話・来場予約・資料請求で分けて見ているか
- 終わった見学会の日程が、広告文やLPに残らない仕組みにしているか
- 取り込みを毎日行っているか
まとめ
注文住宅の広告で大事なのは、検討期間の長さを「仕方ないもの」として扱わず、計測と評価の設計に組み込むことです。契約は広告に戻せる期限に間に合わないので、期限内に出そろう商談を主な成果にし、手前の段階には契約までの割合で価値を付ける。評価はクリック月ごとに追い、90日時点の契約数で予算を絞らない。
この3つをそろえるだけで、自動入札が「早く決まる人」ばかりを追う状態から抜け出せます。顧客管理ツールの日付とクリックIDという地味なデータが、いちばん効く改善の材料です。
リスティング広告の運用代行/計測設計
御社の来場予約から契約までを、広告の学習につなげませんか。
当社のリスティング広告の運用代行では、来場・商談・契約のデータを広告に戻す計測設計から、段階ごとの価値付け、コホートでの評価までまとめて担当します。運用手数料は広告費の10%(月額最低5万円・税別)。最初の60分の無料相談では、サービスの案内はせず、御社の数字を一緒に見ます。
この記事を書いたチーム株式会社Acquizeの運用チーム。自社でもWeb広告で集客する事業を運営しながら、受託先の予算運用を担当しています。記事中の考え方は、実際の運用で使っているものです。

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