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MCVで自動入札を学習させるリスク|成約1件あたりの費用が上がっていく仕組みと、何を学習させるべきか

MCVで自動入札を学習させるリスク|成約1件あたりの費用が上がっていく仕組みと、何を学習させるべきか

成約の件数が少なくて自動入札の学習が進まない。だから、件数の多い「ボタンのクリック」や「フォームの入力開始」を成果にして学習させる。MCV(マイクロコンバージョン)を使ったこの運用は、立ち上げ直後のアカウントでよく見かけます。始めた直後は件数が増え、CPAも下がるので、うまくいっているように見えます。ただ、数か月たつとMCVは安く取れているのに、成約1件あたりの費用だけが上がっていくことが多い。この記事では、なぜそうなるのかを自動入札の仕組みから分解し、何を学習させるべきか、MCVをどう扱うべきかを、実務の手順で書きます。

この記事の結論

  1. 01自動入札は「数えた成果」を安く増やす方法を学ぶ。MCVを成果にすると、成約しやすい人ではなく、ボタンを押しやすい人を集めることを覚える。
  2. 02MCVから成約までの割合は、配信面・デバイス・時間帯で何倍も違う。MCVのCPAが同じでも、成約1件あたりの費用は5倍以上違うことが普通に起きる。
  3. 03学習させる成果は、件数が足りる範囲で成約→商談化→価値を付けたMCVの順に選ぶ。MCVは消さずに観測用として残し、成約÷MCVの比率を毎日見る。
目次

MCVとは何か、なぜ使われるのか

MCVは、最終的な成果(申込み・成約)の手前にある中間地点です。よく使われるのは次のようなものです。

  • LPの申込みボタン・外部サイトへのリンクのクリック
  • フォームの入力開始、または1ページ目の送信
  • 料金ページ・資料ページの閲覧、一定時間以上の滞在

使われる理由ははっきりしています。目標CPAや目標ROASの自動入札は、学習のためにある程度の成果の件数を必要とします。以前から「直近30日で30件程度」がひとつの目安と言われてきました。月に成約が5件しかないアカウントでは、自動入札がどの検索・どの人が成約しやすいかを学ぶ材料が足りません。そこで、件数が10倍以上ある中間地点を成果にして、学習を早く進めようとするわけです。

考え方としては筋が通っています。問題は、自動入札は「成果に近い指標」を理解してくれるわけではないことです。教えられたものを、そのまま最大化しにいきます。

自動入札は「数えた成果」を最大化する

自動入札は、オークションのたびに「この検索をした、この人が、成果に至る確率」を予測し、その確率と目標値から入札額を決めています。予測に使われるのは、検索語句・デバイス・地域・時間帯・閲覧の文脈など、オークションの時点で分かる情報です。

ここで大事なのは、予測の対象が「成果として数えたもの」だという点です。MCVを成果にすれば、自動入札が学ぶのは「どんな人がボタンを押すか」です。その人が成約するかどうかは、学習の対象に入っていません。

自動入札が上げにいくもの = 成果として数えたものの件数(または価値)

成果=MCV にすると → MCVを安く増やす方法を覚える

「MCVが増えれば成約も比例して増えるはず」という前提が成り立っているうちは問題ありません。ところが、MCVを増やしにいく過程で、この前提そのものが崩れていきます。次の章から、崩れ方を5つに分けて見ていきます。

リスク1 入札が「押しやすい人」に寄っていく

MCVを安く増やすいちばんの近道は、ボタンを押しやすい人を集めることです。とりあえず比べてみたい人、料金だけ確認したい人、スマホで間違えて押した人。自動入札は、こうした人が多い検索・配信面・時間帯への入札を強めていきます。

MCVで学習させると、MCVは増えても商談・成約が細っていく様子を表した図
図1 自動入札は「数えた成果」を安く増やしにいく。MCVを成果にすると、押しやすい人を集めることを覚え、その先の商談・成約は細っていく。

広告費を変えずに、学習が進む前と後を比べた例です(数値は説明用に整えたものです)。

広告費MCVMCVのCPAMCV→成約成約成約1件あたり
設計した時300万円1,000件3,000円5.0%50件60,000円
学習が進んだ後300万円1,400件約2,140円3.0%42件約71,400円
学習前と学習後(広告費は同じ300万円)MCVのCPA(学習前)3,000円MCVのCPA(学習後)2,143円成約1件あたり(学習前)60,000円成約1件あたり(学習後)71,429円MCVのCPAは29%下がり、成約1件あたりの費用は19%上がる
図2 MCVの指標が良くなるほど、成約1件あたりの費用は悪くなる。管理画面の成果の列とは逆の動きになる。

管理画面の成果の列では、MCVのCPAが29%改善しています。運用レポートでは「改善」と書かれる数字です。一方で、成約は50件から42件に減り、成約1件あたりの費用は19%悪化しています。MCVの指標が良くなるほど、事業の数字は悪くなる。MCVで学習させる運用のいちばん怖い所は、ここで向きが逆になることです。

しかも、このずれは少しずつ進みます。学習を始めた最初の数週間は、まだ以前の配信の傾向が残っているので、成約もそれなりに出ます。数か月かけて配信が「押しやすい人」に寄り切った頃に、ようやく成約の数字に表れます。気づいた時には、元に戻すのにまた学習期間がかかります。

リスク2 MCVから成約までの割合は、配信先ごとに全く違う

MCV1件の価値は一定ではありません。同じボタンのクリックでも、検索広告から来た人と、ディスプレイやデマンドジェネレーションの面から来た人では、その後に成約する割合がまるで違います。

配信面広告費MCVMCVのCPAMCV→成約成約成約1件あたり
検索180万円600件3,000円8.0%48件37,500円
ディスプレイ系180万円600件3,000円1.5%9件200,000円
合計360万円1,200件3,000円4.75%57件約63,200円
配信面別の成約1件あたりの費用(MCVのCPAはどちらも3,000円)検索37,500円ディスプレイ系200,000円MCVの列だけ見ると同じ。成約で見ると5倍以上の差
図3 同じMCVのCPAでも、配信面によって成約1件あたりの費用は大きく違う。

MCVのCPAはどちらも3,000円で、MCVの列だけ見れば「どちらも同じくらい良い」配信です。成約1件あたりで見ると、ディスプレイ系は検索の5倍以上の値段です。

MCVで学習している自動入札は、この差を知りません。それどころか、ディスプレイ系の方がMCVを少しでも安く取れれば、そちらに予算を寄せていきます。P-MAXやデマンドジェネレーションのように、1つのキャンペーンの中に検索・ディスプレイ・動画・メールなど複数の面が混ざるキャンペーンほど、この偏りは大きく、しかも外から見えにくくなります。

合計の行を見ると、MCV→成約は4.75%です。月次レポートでこの平均値だけを見ていると、配信面の構成が変わったことで平均が下がっているのか、どの面でも同じように下がっているのかの区別がつきません。比率は必ず配信面・デバイス別に分けて見る必要があります。

リスク3 増分の質の劣化が、数字に出なくなる

予算を増やした時に追加で取れる件数は、平均より質が低いのが普通です。広げた先の検索語句は意図が遠く、自動入札は予測CVRの低いオークションにも入るようになるからです(詳しくは増分CPAとCPAカーブの記事で書いています)。

成約や商談を成果にしていれば、この劣化は「増分のCPOが上がる」という形で数字に表れ、予算を止める判断ができます。MCVを成果にしていると、劣化はMCVの数字には出てきません。MCVのCPAは横ばいなのに、成約1件あたりの費用だけが静かに上がっていく。予算を止める判断の材料そのものが、管理画面から消えてしまいます。

リスク4 成果が出るまでの時間の差を、自動入札が覚えてしまう

MCVは、広告をクリックしたその場で計上されます。成約は、商材によって数日から数週間あとです。MCVで学習させている間、自動入札は「すぐに反応する人」を高く評価し、時間をかけて比べてから申し込む人を相対的に低く評価します。

この偏りは、成約データの「問い合わせから成約までの日数」を分布で見ると確かめられます。日数を「当日」「1〜7日」「8〜30日」「31日以上」に分けて、それぞれの受注単価を並べてみてください。後ろの区分ほど単価が高いアカウントは、MCVで学習させると損をしやすいアカウントです。逆に、ほとんどが当日に決まる商材なら、この点の影響は小さくなります。

高単価の商材やBtoBでは、時間をかけて比べる人ほど受注単価が高い、ということがよくあります。MCVで学習させると、いちばん欲しい顧客ほど入札で後回しにされることになります。

リスク5 計測の汚れに弱い

ボタンのクリックは、計測としてとても汚れやすい指標です。

  • 二重発火:タグの設定ミスや、同じボタンに複数のトリガーが付いていて、1回のクリックが2件になる。
  • 再読み込み・戻る操作:完了ページを再読み込みしたり、戻ってもう一度押したりすると、その分だけ件数が増える。
  • 誤タップ:スマホでスクロール中に押してしまう。追従ボタンやページ下部の固定ボタンで特に多い。
  • ボット:リンクを順に踏んでいくクローラーや不正なクリック。

自動入札は、汚れたデータでも「成果」として学びます。二重発火が特定の端末やブラウザだけで起きていれば、その端末への入札が強まります。成約データは顧客管理ツールで重複が除かれ、人の目も通っているので、こうした汚れに強い。学習させるデータは、汚れにくい方を選ぶのが原則です。

では、何を学習させるのか

答えは単純で、件数が足りる範囲で、いちばん事業の成果に近いものです。当社では、月の件数に応じて次の順で選んでいます。

月の件数の状態学習させる成果補足
成約が月30件前後以上成約(オフラインCV)顧客管理ツールの成約データを、広告のクリックIDと一緒に広告へ戻す
成約は少ないが、商談が月30件前後以上商談化成約より手前だが、人が見て「見込みがある」と判断した後なので質は保たれる
商談も少ない配信面ごとに価値を付けたMCVMCVに「その面での成約率×粗利」の価値を付け、価値ベースの入札にする
どれも足りない自動入札に頼らない上限CPCを決めた入札で、検索語句を人が見て絞る段階

価値を付けたMCVの作り方

MCVしか使えない場合でも、全部のMCVを同じ1件として数えるのはやめます。過去の実績から、配信面(または検索語句のグループ・デバイス)ごとの「MCV→成約」の割合を出し、MCVに価値を付けます。

MCVの価値 = その配信面でのMCV→成約の割合 × 成約1件の粗利

検索:8.0% × 30万円 = 24,000円 / ディスプレイ系:1.5% × 30万円 = 4,500円

こうしておけば、自動入札(目標ROAS)は「ディスプレイ系のMCVは検索の5分の1以下の価値しかない」と知った上で入札します。リスク2の偏りを、かなりの部分まで抑えられます。割合は月に1回は見直し、配信面の構成が大きく変わった時はその都度更新します。

成約データを広告に戻す時の注意点

  • クリックIDを必ず残す:問い合わせの時点で、広告のクリックID(gclid等)をフォームの隠し項目などで受け取り、顧客管理ツールに保存しておく。後から紐付けることはできません。
  • 取り込みは毎日:週に1回まとめて戻すと、自動入札にとっては「成果が来ない期間」と「急にまとめて来る日」ができ、学習が不安定になります。
  • 戻せる期限に注意:媒体ごとに、クリックから何日以内の成果なら戻せるかの期限があります。検討期間が長い商材は、期限内に戻せる中間の段階(商談化)を併用します。
  • 切り替え直後は件数が落ちる:成果の定義を変えると、自動入札は学習し直します。MCVで回していた頃より件数は大きく減って見えるので、切り替えの前に「MCVの件数ではなく成約の件数で評価する」ことを関係者とそろえておきます。

MCVで回すしかない時の、出口の決め方

立ち上げ直後で成約も商談も数件しかない時期には、MCVで学習させるしかない場面もあります。その場合でも「とりあえずMCVで」と始めず、いつ・何を見てやめるかを最初に決めておきます。当社が決めているのは次の3点です。

① 期限を決める

MCVで学習させる期間は、最初から区切ります。目安は、成約か商談化の件数が「月30件前後」に届く見込みの時期までです。届いた時点で、成果の定義を切り替えます。期限を決めずに始めると、MCVの数字が良く見えている間は誰も切り替えたがらず、ずるずると続きます。

② 比率の下限を決める

開始時点の「成約÷MCV」の比率を記録しておき、それが一定以上落ちたら、期限の前でもMCVでの学習をやめます。例えば開始時に5%なら、4週間の平均で3.5%を下回った時点で見直す、という形です。比率の下限は、成約1件あたりの許容費用から逆算します。MCVのCPAが3,000円で、成約1件に払えるのが75,000円までなら、比率の下限は3,000÷75,000=4%です。この下限を割った時点で、MCVをいくら安く取っても採算が合わなくなります。

比率の下限 = MCVのCPA ÷ 成約1件あたりの許容費用

3,000円 ÷ 75,000円 = 4% → 成約÷MCVが4%を割ったら、MCVでの学習はやめる

③ 配信面を絞る

MCVで学習させる間は、配信面の広いキャンペーン(P-MAX、デマンドジェネレーションなど)を組み合わせないか、組み合わせる場合も予算を小さく抑えます。リスク2で見たとおり、面が広いほどMCVの価値のばらつきが大きく、偏りが外から見えにくくなるからです。まずは検索だけで成約データを貯め、成約で学習できる状態になってから面を広げる方が、結果的に早く伸びます。

MCVは消さずに、観測用として残す

MCVで学習させないからといって、MCVの計測をやめる必要はありません。むしろ、観測用の指標としては非常に役に立ちます。成約より件数が多く、反応が早いので、変化に早く気づけるからです。

  • 入札の対象からは外す:Google広告なら、MCVのコンバージョンアクションを「サブのアクション」にして、入札には使わず列として見るだけにします。
  • 成約÷MCVの比率をキャンペーンごとに毎日見る:この比率が急に落ちたキャンペーンは、押しやすい人に寄り始めているか、計測が汚れ始めているサインです。当社では、4週間の平均から3割以上落ちたキャンペーンを確認の対象にしています。
  • 配信面・デバイス別にも分ける:比率の低下が特定の面やデバイスに集中していれば、誤タップや二重発火を疑ってタグを点検します。

設定で実際に起きる落とし穴

「成約だけで入札する」と決めて設定したつもりでも、媒体側の別の設定が残っていて、MCVや他の成果が入札対象に混ざったままになっていることがあります。当社でも実際に起きたことです。

確認しておきたい3つの点

  • Google広告のAPIでキャンペーンごとの目標を設定する場合、キャンペーン固有の目標を指定しただけでは、アカウント既定の目標側の「入札対象」の設定が残るケースがあります。
  • コンバージョンアクションを後から追加したり、カテゴリを変えたりすると、そのカテゴリの既定の目標が入札対象として自動で戻ることがあります。
  • 設定したら終わりにせず、campaign_conversion_goal をキャンペーンごとに全件照会し、意図しない目標が入札対象になっていないかを確認するところまでを1セットにします。管理画面で見る場合も、キャンペーンごとの「コンバージョン目標」の設定を1つずつ開いて確かめます。

自分で変えた項目だけを確認していると、自分が変えていない所で起きた変化には気づけません。媒体側の設定を全件取り出して、意図と照らし合わせるやり方にしておくことが大切です。

チェックリスト

  1. 入札が学習している成果は、件数が足りる範囲でいちばん事業の成果に近いものか
  2. MCVで学習させている場合、配信面ごとの価値を付けているか
  3. MCVの計測は残し、入札の対象からは外しているか(サブのアクション)
  4. 成約÷MCVの比率を、キャンペーン・配信面・デバイス別に毎日見ているか
  5. 問い合わせの時点で、広告のクリックIDを顧客管理ツールに保存しているか
  6. 成約・商談データを、毎日広告に戻しているか
  7. 二重発火・再読み込み・誤タップでMCVが水増しされていないか、タグを点検したか
  8. キャンペーンの目標設定を、媒体側のデータを全件照会して確認したか
  9. コンバージョンアクションを触った後に、全キャンペーンの目標設定を確認し直したか
  10. レポートで、MCVのCPAではなく成約1件あたりの費用を主な指標にしているか

まとめ

自動入札は、教えられたものを忠実に増やします。MCVを教えればMCVを増やし、その過程で「押しやすい人」「MCVが安い面」「すぐ反応する人」に寄っていきます。MCVの数字が良くなるほど、事業の数字が悪くなることがあるのはそのためです。

学習させるのは、件数が足りる範囲でいちばん成約に近い成果。MCVは捨てずに、変化に早く気づくための観測用に回す。この役割分担をはっきりさせるだけで、自動入札の向かう先はかなり変わります。

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この記事を書いたチーム株式会社Acquizeの運用チーム。自社でもWeb広告で集客する事業を運営しながら、受託先の予算運用を担当しています。記事中の考え方は、実際の運用で使っているものです。

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