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保育園の広告は「空いた席」から設計する|見学予約の上限・商圏・時期の決め方

保育園の広告は「空いた席」から設計する|見学予約の上限・商圏・時期の決め方

「見学の問い合わせは来るのに、空いている3歳児クラスが埋まらない」「0歳児の4月入園は募集を出さなくても埋まる」。保育園の広告の相談では、園全体の数字ではなく、クラスごとの空きが問題になっていることがほとんどです。待機児童は2025年4月時点で全国2,254人と過去最少になり、定員に対する利用児童の割合は全国平均88.4%、過疎地域では74.6%まで下がっています。「出せば埋まる」時期は終わり、どの年齢の空きに、どの範囲から、いくらで見学を集めるかを数字で決める段階に入っています。この記事では、空き1席の価値の出し方、認可と認可外で違う広告の役割、商圏と時期の設計、見学から入園までの計測を、運用の手順で書きます。

この記事の結論

  1. 01広告に払える額は、園全体ではなくクラス別の「空き1席の価値」から出す。0〜2歳の1席は3歳以上の2〜4席分で、許容できる見学予約の単価は数倍違います。
  2. 02認可保育園は入園の決定が自治体の利用調整なので、広告のゴールは「見学して、第1希望に書いてもらう」まで。認可外・企業主導型の地域枠は直接契約なので、入園まで広告で追えます。
  3. 03配信地域は園から送迎で通える範囲(目安は半径1.5〜3km)に絞り、時期は4月入園の申込前の見学期と、年度途中の入園の締切前に寄せる。検索語句は「地域名・駅名+保育園」が中心です。
目次

保育園の広告は「クラス別の空き」から設計する

最初にやるのは、広告の設定ではなく、空きの棚卸しです。保育園の空きは、園全体の定員充足率で見ると判断を誤ります。0歳・1歳児クラスは4月に埋まっているのに、3〜5歳児クラスだけ空いている、という形がいまの典型だからです。

定員充足率

在籍児童数 ÷ 利用定員

園全体の数字。運営の健全さを見る指標で、広告の設計にはそのまま使えません。

空き1席の価値

その年齢の月の収入 − 1人増えた時に増える費用

クラス別に出す。広告で埋めにいくのは、この値が大きい席からです。

認可保育園の収入は、子ども1人ごとの単価(公定価格)が年齢で大きく違います。地域区分・定員規模・加算で実際の単価は変わるので、以下は説明用の仮の単価です。自園の数字に置き換えて計算してください。

クラス月の収入(説明用)空き1席が1年埋まらない時の収入減保育士の配置基準
0歳児200,000円2,400,000円3人に1人
1歳児130,000円1,560,000円6人に1人
2歳児130,000円1,560,000円6人に1人
3歳児60,000円720,000円15人に1人
4・5歳児55,000円660,000円25人に1人
空き1席が1年埋まらない時の収入減(認可・説明用の仮の単価)0歳児2,400,000円1歳児1,560,000円2歳児1,560,000円3歳児720,000円4・5歳児660,000円0〜2歳の1席は、3歳以上の2〜4席分。どのクラスの空きを埋めるかで広告に払える額が変わる
図1 クラス別に、空き1席が1年埋まらない時の収入減(説明用の仮の単価)。0〜2歳の1席は、3歳以上の2〜4席分に当たる。広告でどのクラスの空きを埋めにいくかで、払える額が大きく変わる。

3歳児・4・5歳児の配置基準は、2024年度に「20人に1人→15人に1人」「30人に1人→25人に1人」へ改善されています。配置基準は、次の章で書く「何人目を埋めると得か」の計算に直接効きます。

何人目の空きかで、1席の価値は変わる

空き1席の価値は、同じクラスでも「何人目か」で変わります。保育士を1人増やさないと受け入れられない人数なら、その1人目の受け入れは赤字になるからです。0歳児クラスで、保育士の人件費を1人月35万円、子ども1人あたりの変動費(給食・保育材料など)を月1.5万円として計算します(説明用)。

クラスの月の粗利 = 在籍数 × 月の収入 − 必要な保育士数 × 人件費 − 在籍数 × 変動費

必要な保育士数 = 在籍数 ÷ 配置基準(端数は切り上げ)

0歳児の在籍必要な保育士月の収入人件費月の粗利6人の時との差
6人2人1,200,000円700,000円410,000円-
7人3人1,400,000円1,050,000円245,000円−165,000円
8人3人1,600,000円1,050,000円430,000円+20,000円
9人3人1,800,000円1,050,000円615,000円+205,000円

7人目だけを受け入れると、月16.5万円の赤字です。8人目でようやくとんとん、9人目まで埋めて初めて月20.5万円のプラスになります。保育士を増やすなら、配置基準の上限まで一気に埋める計画とセットで広告を出す。逆に、いまの職員数で受け入れられる「配置基準の余り」の席は、追加の人件費がかからないので、最も広告をかける価値のある席です。実際には園全体の職員配置や加算の取り方で変わるので、施設長・本部と人数の上限をそろえてから広告の目標を決めます。

認可と認可外で、広告のゴールは違う

保育園の広告でいちばん誤解が多いのがここです。認可保育園と、認可外保育施設・企業主導型保育の地域枠では、入園を決める人が違います。

認可保育園と認可外・企業主導型の入園までの流れと、広告で動かせる範囲を比べた図
図2 認可保育園は、自治体への申込のあと利用調整(点数)で入園先が決まり、園も広告も関与できない。認可外・企業主導型の地域枠は園と直接契約するので、入園まで広告の成果として追える。
  • 認可保育園:保護者は自治体に申し込み、希望する園を順位付きで書きます。入園先は保育の必要性の点数(指数)で自治体が決めます。広告とLPで動かせるのは「見学に来てもらい、希望順位の上の方に書いてもらう」ところまでです。
  • 認可外保育施設・企業主導型保育の地域枠:保護者と園が直接契約します。見学から申込・入園まで、すべて広告の成果として計測できます。企業主導型の地域枠は利用定員の50%以内が原則で、2024年7月の改正で、従業員枠に空きがある場合は50%を超えて地域の子どもを受け入れられるようになりました。

この違いで、見学予約から入園までの割合も変わります。見学予約40件あたりの例です(説明用)。

見学予約見学申込(認可は第1希望に記入)入園予約→入園
認可保育園40件32件(80%)13件(41%)7件(54%)17.5%
認可外・企業主導型の地域枠40件32件(80%)14件(44%)12件(86%)30.0%

認可の場合、第1希望に書いてもらっても、点数の高い家庭が他にいれば入園にはなりません。その分、見学予約1件に払える額は下がります。

見学予約1件にいくら払えるかを計算する

ここまでの数字をつなげると、クラス別・園の種類別に、見学予約1件の上限が出ます。

許容入園CPO =(月の収入 − 変動費)× 12か月 × 広告に回してよい割合

許容見学予約CPA = 許容入園CPO × 見学予約→入園の割合

初年度の限界粗利だけで計算し、広告に回してよい割合を30%とした例です。1歳で入園した子は5歳の卒園まで在園することが多いので、在園年数で見ればもっと払えますが、保守的に初年度だけで出しておきます。

見学予約1件に払える上限(許容見学予約CPA)認可 0歳児116,550円認可 1歳児72,450円認可外 0〜2歳児59,400円認可外 3歳以上48,600円認可 4・5歳児25,200円初年度の限界粗利×30%×見学予約→入園の割合。3歳以上の認可の席は上限が約2.5万円まで下がる
図3 クラス別・園の種類別の許容見学予約CPA。認可の0歳児は約11.7万円まで払える計算になる一方、認可の4・5歳児は約2.5万円まで下がる。同じ「見学予約」でも、どのクラスの空きに対する予約かで価値は5倍近く違う。

大事なのは、上限が高い0歳児の席は、そもそも4月には広告なしで埋まることが多い点です。広告費を使うべきなのは「上限がそこそこ高く、かつ自然には埋まらない席」で、多くの園では1歳児の年度途中の空きと、3歳児クラスの空きがそれに当たります。キャンペーンや広告グループを「3歳児クラスの空き」「年度途中の0〜1歳」のように空きの種類で分けておくと、空きが埋まった広告グループだけ止められます。

商圏と時期:配信する範囲と月を絞る

① 配信地域は送迎で通える範囲だけ

保育園は毎日の送迎があるので、商圏は小さい。目安は徒歩・自転車で片道15分、半径1.5〜3kmです。駅前の園は「最寄り駅+1〜2駅」の通勤動線上も商圏になります。Google広告の地域設定は、半径指定か市区町村の指定で絞り、地域の対象を「所在地:ターゲット地域に所在地がある、または定期的にいるユーザー」にします。初期設定の「所在地または関心」のままだと、遠方で地域名を検索しただけの人にも出ます。

例外は、引っ越しを控えた家庭です。転勤や住み替えで「引っ越し先の地域名+保育園」を検索する人は、いまの所在地が商圏外です。この層を取りたい場合だけ、地域名を含む検索語句に限って「関心」を含める別キャンペーンを作ります。

② 時期は申込の締切から逆算する

  • 4月入園:多くの自治体で、申込の受付は秋から冬(10〜12月ごろ)、結果の通知は1〜2月です。見学はその前の9〜11月に集中するので、広告もこの期間に厚くします。日程は自治体ごとに違うので、商圏内の自治体の締切を一覧にしてから配分を決めます。
  • 年度途中の入園:育休明けに合わせて毎月発生します。自治体の申込締切は入園月の前月上旬〜中旬が多いので、空きが出た月の前々月から見学を集めます。
  • 4月入園の二次募集:一次の結果が出た後の2〜3月は、保留になった家庭が認可外・企業主導型を探す時期です。認可外・企業主導型の地域枠にとっては1年で最も重要な期間です。

検索語句と広告文:「地域名+保育園」を中心に組む

保育園の検索は、ほぼ必ず地域名か駅名が付きます。検索語句は次のまとまりで管理します。

  • 地域名・駅名+保育園:中心のまとまり。「○○駅 保育園」「○○町 保育園 空き」など。
  • 種類を指定した検索:「○○区 認可外保育園」「企業主導型保育園 ○○」。認可の保留を想定している家庭が多く、認可外・企業主導型の園にとって入園率の高い層です。
  • 一時預かり・こども誰でも通園制度:2026年4月から、保育園に通っていない0歳6か月〜3歳未満の子が月10時間を上限に通える「こども誰でも通園制度」が全国で始まりました。未就園の家庭が園を知る入口になるので、この利用者が翌年度の入園につながる流れを作っておくと、広告とは別の集客経路になります。
  • 求人の検索:「保育園 求人 ○○」など。見学の広告がここに出ると費用が漏れます。検索語句レポートで実際に出ていたら、園の採用は別のキャンペーンで扱います。

広告文には、検索した人が最初に知りたい「空きのあるクラス」「園からの距離」「見学の日程」を入れます。「3歳児クラス 空きあり(○月時点)」のように、時点を書いて更新します。空きが埋まった後も「空きあり」が残っていると、問い合わせが来ても断ることになり、園の評判を落とします。Googleビジネスプロフィールと住所表示のアセットをつないでおくと、地図上で園の場所と距離が見えるので、商圏外のクリックも減ります。

表示で気を付けること

保育園の広告文とLPで、実際に問題になりやすいのは次の3つです。

  • 認可と誤認させない:認可外保育施設が「保育園」「認定」などの言葉で認可施設と誤解される表示をすると、景品表示法の優良誤認にあたるおそれがあります。施設の種類(認可外保育施設・企業主導型保育事業など)は、LPのファーストビューと料金表の近くに明記します。
  • 無償化の対象の書き方:認可外保育施設で無償化の対象になるのは、都道府県等への届出をしていて、保育の必要性の認定を受けた子どもです。上限は3〜5歳で月37,000円、0〜2歳は住民税非課税世帯で月42,000円です。「保育料無料」と書くと、上限を超える部分や対象外の家庭がある以上、誤解を招きます。「無償化の対象施設(上限あり・認定が必要)」と条件を書きます。
  • 「待機児童ゼロ」「すぐ入れる」:自治体の数字や、ある時点の空きを根拠なく一般化しない。時点と対象クラスを書きます。

審査で不承認になった時は

  • 当社の自社運用で不承認の理由を分類した時は、誇張表現による不承認が22件から1件まで減り、全体で承認42本・不承認6本まで改善しました。広告文の言い換えだけでなく、LP側の根拠(時点・条件)を書き足すのが近道です。

見学から入園までを計測する

保育園は件数が少ない業種です。1つの園で見学予約が月に10〜20件、入園が数件というのが普通なので、入園だけを成果にすると自動入札の学習に足りません。かといって見学予約だけを成果にすると、入札は「予約フォームを送りやすい人」に寄っていきます。この問題はMCVで学習させるリスクの記事で詳しく書いています。

件数の少ない園で現実的なのは、次の組み立てです。

  • 見学予約のフォームに、クリックID(gclid)・希望する入園時期・子どもの生年月を隠し項目と入力項目で持たせる。
  • 見学が実施されたら「見学実施」、認可外・企業主導型は申込・入園、認可は「第1希望に記入した(保護者に確認できた範囲で)」を、園の台帳に記録する。
  • 見学実施と入園を、オフラインコンバージョンとして広告に戻す。クリックから入園までが90日を超える場合(4月入園で9月に見学した家庭など)は、取り込めるのは見学実施までと割り切る。
  • 入札は、件数が月15件未満のうちは手動か「クリック数の最大化+上限CPC」で回し、見学実施が月30件程度たまってから、見学実施を成果にした自動入札を試す。

複数の園を運営している法人なら、園ごとではなく法人全体のアカウントで見学実施を集めると、学習に必要な件数に早く届きます。その場合も、キャンペーンは園ごと・空きの種類ごとに分けて、予算は空き1席の価値で配ります。

見学予約のLPに載せる情報

保育園の見学予約は、保護者が複数の園を並べて比べたうえで入ってきます。LPで比べられる項目を先に出しておくと、見学に来た後の辞退が減ります。

  • 空きのあるクラスと時点:「2026年11月1日時点 3歳児クラス2名・1歳児クラス1名」のように、ファーストビューの見出しの直下に置く。
  • 開所時間と延長保育の料金:通勤時間を足して送迎が間に合うかを、保護者は最初に計算します。延長の1回あたりの料金まで書きます。
  • 持ち物・紙おむつ・給食:「おむつは園で用意」「主食持参なし」のような毎日の手間は、園を選ぶ決め手になりやすい項目です。
  • 見学の日程:予約フォームで直近2週間の枠をカレンダーで見せる。見学までの日数が空くほど、他の園で決まって来なくなります。
  • 認可外・企業主導型は月額の総額:保育料・入園料・施設費・給食費を合計し、無償化が使える場合の負担額を条件付きで並べます。

見学予約から見学までの割合(説明用の例では80%)が70%を下回る時は、LPではなく予約から見学までの日数を疑います。予約の受付時に、前日のリマインドを電話かメッセージで送るだけで戻ることが多い数字です。

よくある落とし穴と見分け方

① 園全体の空き人数で予算を決める

「空きが5人あるから広告を強める」と決めても、その5人が4・5歳児なら、見学予約1件に払える額は約2.5万円です。0歳児の空き1人の方が、広告をかける価値は大きいことがあります。空きは必ずクラス別・入園月別に並べます。

② 見学予約の数で成果を判断する

見学予約は増えたのに入園が増えない時、多いのは「商圏外からの予約」と「入園時期が1年以上先の予約」です。フォームの入園希望時期と住所(町名まで)で分けて集計すると、どちらが原因か見分けられます。

③ 空きが埋まった後も広告が出続ける

空きが埋まったのに広告が止まっていないと、見学に来てもらっても「空きがありません」と伝えることになります。空きの種類ごとに広告グループを分けておけば、埋まった時点でその広告グループだけ止められます。

④ 地域名のキーワードを市区町村名だけで作る

保護者が検索に使う地名は、市区町村名より駅名・町名・通称の方が多い。商圏内の駅名と町名をすべて洗い出し、「地名+保育園」「地名+保育園 空き」の組み合わせを入れておきます。検索の量は1語ずつは小さくても、合計すると市区町村名の検索を上回ることがあります。

現場で使っているチェックリスト

  1. 空きを、クラス別・入園月別に並べているか
  2. 空き1席の価値を、月の収入と変動費、保育士の配置から計算しているか
  3. 保育士を増やす場合は、配置基準の上限まで埋める計画とセットにしているか
  4. 認可と認可外で、広告のゴール(第1希望/入園)を分けているか
  5. 配信地域を送迎で通える範囲に絞り、地域の対象を「所在地」にしているか
  6. 商圏内の自治体の申込締切から、見学を集める時期を逆算しているか
  7. 広告文の「空きあり」に時点とクラスを書き、埋まったら止めているか
  8. 施設の種類・無償化の条件を、誤解されない書き方にしているか
  9. 見学予約にgclidと入園希望時期を持たせ、見学実施を広告に戻しているか
  10. 求人の検索に見学の広告が出ていないかを、検索語句レポートで確認しているか

まとめ

保育園の広告は、問い合わせの数を増やすこと自体より、どのクラスの、どの月の空きを、どの範囲から埋めるかを決めることの方がずっと大事です。空き1席の価値は年齢と「何人目か」で何倍も変わり、認可と認可外で広告のゴールも変わります。

クラス別の空きを並べ、1席の価値から見学予約の上限を出し、商圏と時期を絞って、見学実施を広告に戻す。この順番で組むと、少ない広告費でも、埋めたい席から埋まっていきます。

予算運用(リスティング広告の運用代行)

園の「空き1席の価値」から、広告を一緒に組み立てませんか。

当社の予算運用では、クラス別の空きと商圏から配信を設計し、見学実施のデータを広告に戻す計測まで担当します。運用手数料は広告費の10%(月額最低5万円・税別)。最初の60分の無料相談では、サービスの案内はせず、御園の数字を一緒に見ます。

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この記事を書いたチーム株式会社Acquizeの運用チーム。自社でもWeb広告で集客する事業を運営しながら、受託先の予算運用を担当しています。記事中の考え方は、実際の運用で使っているものです。

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