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矯正歯科の広告運用|メニュー別の許容CPA、精密検査で数える計測、医療広告ガイドライン

矯正歯科の広告運用|メニュー別の許容CPA、精密検査で数える計測、医療広告ガイドライン

「広告から月に20件も相談予約が入るのに、契約は2〜3件しか増えていない」。矯正歯科の院長先生から、いちばんよく聞く相談です。原因はたいてい、広告の成果を「相談予約」で数えていることにあります。矯正は1件80万円前後の自由診療で、相談から契約まで1〜3か月かかり、その途中で大半が抜けていきます。この記事では、矯正歯科のリスティング広告を、治療メニューごとの許容CPA・商圏の検索数・契約までの日数・医療広告ガイドラインまで含めて、運用者の目線で細かく書きます。

この記事の結論

  1. 01許容CPAは治療メニューごとに、限界利益×広告に回す割合×予約から契約に至る割合で出す。説明用の数字では、全体矯正で約3.6万円、部分矯正で約1.7万円と2倍以上違う。
  2. 02契約はクリックから90日を過ぎて決まることが多く、小児では約4割が90日の外。広告に戻す成果は、契約ではなく精密検査を主にする。
  3. 03リスティング広告の広告文は、医療広告ガイドラインの限定解除の対象外として扱われる。書けるのは広告可能事項だけで、費用・リスクの説明は着地ページ側で満たす。
目次

矯正歯科の広告は「高単価・長い検討・少ない件数」の商売です

まず、一般歯科と何が違うのかを数字でそろえます。保険診療が中心の一般歯科は、1人の新患の価値が数万円で、予約から来院までが数日です。矯正はほぼ全額が自由診療で、契約1件が数十万円から100万円を超えます。

相談予約(広告の管理画面で見える成果)

広告費 ÷ 相談予約の件数 = CPA

初診相談・無料カウンセリングの予約。フォーム送信や電話で、クリック直後に計測できる数字です。

契約(医院の売上になる成果)

広告費 ÷ 契約の件数 = CPO

精密検査と診断を経て、治療を始めると決まった件数。医院の予約台帳・カルテにしかない数字です。

この2つの間には、来院・精密検査・診断の3段階があります。相談予約100件が、どこでどれだけ減るかの例です(説明用の数字です)。

段階件数前の段階からの割合相談予約からの割合
相談予約100件(起点)(起点)
初診相談に来院80件80%80%
精密検査を受ける44件55%44%
契約約35件80%約35%

いちばん大きく減るのは、相談から精密検査に進む所です。ここで抜ける人の多くは「費用だけ聞きに来た」「他院と比べている」人です。精密検査は数万円の費用がかかるのが普通なので、精密検査を受けた人は、その医院で治療する意思をかなり固めています。この性質が、後で書く「何を広告に戻すか」の判断の土台になります。

検索から契約までの5段階と、広告の管理画面で見える範囲・医院にだけある範囲を示した図
図1 広告の管理画面で見えるのは相談予約まで。精密検査・契約は医院の予約台帳とカルテにしかない。広告に戻すのは精密検査を主にする。

許容CPAは、治療メニューごとに出します

「矯正のCPAは3万円まで」と1つの数字で決めると、必ずどこかで損をします。メニューごとに、契約額・原価・契約率がまるで違うからです。

限界利益 = 契約額 × (1 − 変動費率)

許容CPA(相談予約1件あたり)= 限界利益 × 広告に回す割合 × 予約から契約に至る割合

変動費には、装置・アライナーの技工料、材料費、分割払いの手数料、調整で来院するたびにかかるチェアタイムの人件費のうち、その患者のために増える分を入れます。マウスピース矯正は技工料(アライナーの製作費)が重いので、契約額が近くても限界利益は小さくなります。

小児矯正は、1期治療だけで終わらず2期治療(永久歯が生えそろった後の本格矯正)に進む子がいます。その分の期待値を足しておかないと、小児の許容CPAを低く見積もりすぎます。以下は広告に回す割合を20%とした計算例です(すべて説明用の数字です)。

メニュー契約額変動費率限界利益予約→契約許容CPA
表側ワイヤーの全体矯正800,000円25%600,000円30%36,000円
マウスピース矯正750,000円35%487,500円28%27,300円
部分矯正350,000円30%245,000円35%17,150円
小児矯正(1期)400,000円20%410,000円40%32,800円

小児の限界利益は、1期の32万円に「2期へ進む割合30%×2期の限界利益30万円=9万円」を足しています。小児は保護者が決めるので、相談に来た時点で治療の意思が固いことが多く、予約から契約への割合も高めに出やすいメニューです。

治療メニューごとの許容CPA(相談予約1件あたり・説明用の数字)表側ワイヤーの全体矯正36,000円マウスピース矯正27,300円部分矯正17,150円小児矯正(1期)32,800円限界利益×広告に回す割合20%×予約から契約に至る割合で計算
図2 治療メニューごとの許容CPA。マウスピース矯正は検索数が多く単価も高いが、技工料が重く契約率も低いので、許容CPAは全体矯正より約9,000円低い。

この表から出てくる実務の結論は2つです。1つ目は、キャンペーンをメニューごとに分けて、目標CPAも別々に持つこと。「マウスピース矯正」「インビザライン」で検索した人と、「出っ歯 矯正」「歯列矯正」で検索した人を同じ目標値で入札すると、許容CPAの低いメニューに予算が流れます。2つ目は、部分矯正の扱いです。許容CPAが全体矯正の半分以下なので、「部分矯正」の検索で全体矯正と同じ単価を払うと赤字になりやすい。相談に来てから全体矯正に切り替わる人の割合を、カルテで実際に数えてから入札を決めます。

予算の上限は、商圏の検索数で決まります

矯正の検索は、全国で見ると大きな数字に見えます。Googleキーワードプランナーで2025年10月〜2026年9月の月間検索数を取ると、「矯正歯科」74,000回、「マウスピース矯正」60,500回、「歯列矯正」49,500回です。ただ、医院が広告を出せるのは通える範囲だけです。

矯正は1〜3年、月1回前後の通院が続くので、一般歯科より遠くから来ます。それでも片道30〜40分が実用上の限界です。人口60万人の商圏を例に、全国の検索数を人口比で割り戻します(都市部は検索が多いので1.3倍の補正をかけた、説明用の推計です)。

商圏の月間検索数 ≒ 全国の月間検索数 × (商圏人口 ÷ 全国人口1.23億人) × 都市部補正1.3

キーワード全国の月間検索数商圏の推計ページ上部の入札単価(高)
矯正歯科74,000約4691,642円
マウスピース矯正60,500約3841,534円
歯列矯正49,500約3141,512円
インビザライン40,500約2571,120円
歯列矯正 費用14,800約94878円
出っ歯 矯正9,900約631,010円
部分矯正8,100約511,173円
裏側矯正6,600約421,414円
小児矯正5,400約34643円
合計269,300約1,708(語句ごとに異なる)

この約1,708回に、インプレッションシェア70%・クリック率8%・平均クリック単価1,300円・予約率5%を当てると、月96クリック・広告費約12.4万円・相談予約約4.8件です。契約にすると約1.7件。汎用語だけなら、月12万円あたりが予算の天井で、それ以上は入札を上げても件数がほとんど増えません。

実際にはこれに「地域名+矯正歯科」「駅名+矯正」の検索が乗ります。ここは全国の数字から割り戻せないので、配信を始めてから検索語句レポートで量を測ります。予算を決める順番は、許容CPAから「いくらまで払えるか」、商圏の検索数から「どこまで使い切れるか」を出し、小さい方を上限にします。

クリック単価の数字の読み方

  • 表の入札単価は、キーワードプランナーの「ページ上部に掲載された広告の高額帯」で、全国の値です。都心の駅名と組み合わせた検索は、これより高くなることがあります。
  • 「矯正歯科 無料相談」は月90回と少ない一方で、高額帯が2,425円と飛び抜けています。相談を集めたい医院同士の競り合いがいちばん激しい語句です。
  • 「マウスピース矯正」「インビザライン」は、全国展開のマウスピース矯正専門のクリニックと同じオークションに入ります。単価で張り合わず、通える範囲と診断の丁寧さで選ばれる設計にします。

契約は90日の外で決まります

ここが矯正歯科の広告でいちばん重要な所です。Google広告にオフラインの成果(医院の台帳にある契約など)を戻す時、クリックから90日を過ぎた成果は取り込めません。コンバージョンの計測期間も最大90日です。ところが矯正の契約は、相談・精密検査・診断を経るので、クリックから数か月後に決まることが珍しくありません。

クリックから契約までの日数を、成人は中央値40日、小児は中央値70日のモデルで描くとこうなります(説明用のモデルです。実際の分布は自院の台帳で測ります)。

25%50%75%100%1日30日60日90日120日150日180日広告クリックからの日数(説明用のモデル)契約のうち、その日までに決まった割合(%)成人小児(1期)
図3 クリックから契約までの日数の累積。成人は90日以内に約86%が決まるが、小児(1期)は約62%しか決まらない。残りは広告に戻せない。
クリックから30日60日90日120日180日
成人35%71%86%93%98%
小児(1期)15%42%62%75%88%

小児は「今すぐではなく、永久歯の生え方を見て始める」ことが多く、相談から開始までが長くなります。契約だけを成果にすると、小児キャンペーンは実際の約6割しか成果が付かず、自動入札は小児を実態より悪いキャンペーンと学習します。結果として、許容CPAが高いはずの小児から予算が抜けていきます。

主に戻すのは精密検査、値は期待利益で付ける

当社が矯正歯科で組むのは、次の形です。

  • 相談予約:計測はするが、入札の対象にはしない(観測用)。件数は多いが、相談だけの人が混ざる。
  • 精密検査:入札の主な成果にする。クリックから2〜4週間で起きるので90日に収まり、契約との相関が強い。
  • 契約:取り込める分は取り込み、成果の値(コンバージョン値)に契約額の限界利益を入れる。90日に入らない分は、月次で台帳と照合して入札の判断に使う。

精密検査に付ける値は、メニューごとの期待利益です。

精密検査1件の値 = 限界利益 × 精密検査から契約に至る割合

例:全体矯正 600,000円 × 80% = 480,000円 / 部分矯正 245,000円 × 80% = 196,000円

値を付けておくと、目標ROASの入札で「部分矯正の検査1件」と「全体矯正の検査1件」を同じ1件として扱わずに済みます。ただし、精密検査は商圏全体でも月に数件〜十数件です。件数が少ないうちは自動入札の目標値を頻繁に動かさず、4週間単位で見ます。中間の成果(MCV)で自動入札を学習させた時に起きる問題は、別の記事で詳しく書いています。

クリックIDを台帳に残す

精密検査や契約を広告に戻すには、相談予約の時点で広告のクリックID(gclid)を受け取り、予約台帳に残しておく必要があります。予約フォームの隠し項目でgclidを受け取り、電話予約は通話の記録と時刻で突き合わせます。外部の予約システムを使っている医院は、予約完了ページにタグが置けるか、gclidを受け渡せるかを最初に確認します。ここができないと、どれだけ入札を工夫しても「相談予約の数」以上の判断ができません。

季節と時間帯で、出す量を変えます

矯正の検索は一年中ほぼ平らですが、例外が2つあります。1つは「矯正 医療費控除」で、確定申告の時期に跳ね上がります。

2,0004,0006,0008,00025/1026/0126/0426/0726/092025年10月〜2026年9月月間検索数(全国・Googleキーワードプランナー)矯正 医療費控除小児矯正
図4 「矯正 医療費控除」は2026年2〜3月に月8,100回と、8月の2,400回の約3.4倍。「小児矯正」は年間を通して月4,400〜6,600回でほぼ平ら。

医療費控除は、国税庁の整理では、発育段階にある子どもの不正咬合の矯正のように治療目的のものが対象で、大人が見た目を整える目的で行う矯正は対象外です。2〜3月に検索が増えても、成人向けの広告文で「医療費控除で安くなる」と書くのは誤解を招きます。この時期は、小児矯正のキャンペーンと、控除の考え方を正確に書いた着地ページに予算を寄せます。

もう1つは時間帯です。ある受託先(来店・訪問型サービス)で、時間帯ごとの実績と問い合わせデータを突き合わせたところ、20時以降は電話受付外で費用対効果がゼロと判明しました。8〜19時は時間帯による差がありませんでした。医院も同じ構造で、電話予約が中心の医院は、受付時間外のクリックが予約にならないことがあります。Web予約が24時間取れるか、時間外のクリックが翌日の予約につながっているかを、時間帯別の予約データで確認してから配信時間を決めます。

広告文に書けること、着地ページで書くこと

矯正歯科の広告文と医院のWebサイトは、医療法の医療広告ガイドラインの対象です。押さえるべき構造は1つで、リスティング広告は「限定解除」の対象として扱われないことです。

ガイドラインでは、広告できる事項は限られていて(広告可能事項)、一定の要件を満たしたWebサイトだけが、その限定を外して詳しい情報を載せられます(限定解除)。自治体の事例解説書では、限定解除の要件の1つ目(患者が自ら求めて入手する情報であること)について、一般的なWebサイトは原則として満たすが、リスティング広告とバナー広告は除く、と整理されています。

リスティング広告の広告文医院のWebサイト(着地ページ)
書ける範囲広告可能事項だけ(診療科名・医院名・所在地・診療日時・自由診療である旨と標準的な費用 など)限定解除の要件を満たせば、治療方針・症例写真なども載せられる
症例写真・ビフォーアフター不可治療内容・費用・リスクや副作用の説明を併記した場合に限る
体験談不可不可(治療の内容・効果に関する体験談は載せられない)
「痛くない」「最短○か月」「地域で一番」不可(誇大・比較優良)不可(誇大・比較優良)

着地ページで自由診療の情報を出すなら、標準的な費用、治療期間と通院回数の目安、主なリスク・副作用を、本文から読める場所に書きます。国内で薬機法の承認を受けていない装置を使う場合は、未承認であること、入手経路、国内の承認品の有無、諸外国での安全性の情報も明示が必要です。

分割払いの月額は、総額と支払回数を並べて書きます。月額だけを大きく見せると、費用の誤認につながります。広告文の見出しは「○○駅 徒歩3分」「土日診療」「精密検査の流れ」「標準的な費用の目安を掲載」のように、事実と検索語句の一致で作ります。

矯正歯科の運用でよくある落とし穴

「無料相談」の予約数で評価して、相談だけの人を集めてしまう

「無料相談」を前面に出すと、相談予約のCPAは下がります。ところが精密検査に進む割合も下がり、契約1件あたりの費用はむしろ上がることがあります。相談予約のCPAと、精密検査1件あたりの費用を必ず並べて見ます。

マウスピース矯正の検索に、全体矯正と同じ単価を払う

図2のとおり、マウスピース矯正の許容CPAは全体矯正より低い計算です。検索数が多いので予算が吸われやすく、気づくと全体の予算の半分以上を占めていることがあります。メニューごとにキャンペーンを分け、精密検査1件あたりの費用で比べます。

他院の医院名で検索した人に広告を出す

他院の医院名を含む検索は、その医院に通っている患者や、すでに比べ終えた人が中心です。予約になっても、転院の相談で精密検査に進まないことが多い。検索語句レポートで他院名の語句が出ていないかを週に1回確認し、精密検査につながっていない語句は外します。

指名検索の安さで、全体の数字をよく見せてしまう

自院名での検索は、広告がなくても自然検索から来る人が大半です。指名キャンペーンを他のキャンペーンと混ぜて報告すると、全体のCPAが実態より安く見えます。指名と一般の検索は分けて報告します。

一般歯科(保険診療や急患)の広告の組み方は、歯医者の広告の記事にまとめています。

現場で使っているチェックリスト

  1. 許容CPAを、治療メニューごとに限界利益×広告に回す割合×予約から契約に至る割合で出しているか
  2. 小児矯正の限界利益に、2期治療へ進む分の期待値を足しているか
  3. キャンペーンをメニューごとに分け、目標値を別々に持っているか
  4. 商圏の検索数から、予算の天井を出しているか(許容CPAとの小さい方が上限)
  5. 相談予約を観測用にして、精密検査を入札の主な成果にしているか
  6. 精密検査・契約に、メニューごとの期待利益を値として付けているか
  7. 相談予約の時点でgclidを受け取り、予約台帳に残しているか
  8. クリックから契約までの日数を台帳で測り、90日を超える割合を把握しているか
  9. 成人向けの広告文で、医療費控除の対象になると誤解させていないか
  10. 広告文は広告可能事項だけで作り、症例写真・体験談・誇大表現を使っていないか
  11. 着地ページに、標準的な費用・期間・リスクと副作用を書いているか
  12. 時間帯別に、受付時間外のクリックが予約になっているかを確認したか

まとめ

矯正歯科の広告は、件数の少ない高額商品を、長い検討期間の先で売る商売です。相談予約の数で評価している限り、相談だけの人が集まるほど成果が上がって見えるという逆の評価になります。

メニューごとに許容CPAを出し、商圏の検索数で予算の天井を確かめ、精密検査を主な成果として広告に戻す。広告文は広告可能事項だけで作り、詳しい説明は着地ページで限定解除の要件を満たして書く。この4つがそろえば、広告費の使い道を契約の数字で説明できるようになります。

予算運用(リスティング広告の運用代行)

相談予約ではなく、精密検査と契約で広告を回しませんか。

当社の予算運用では、治療メニューごとの許容CPAの設計から、予約台帳と広告をつなぐ計測までまとめて担当します。運用手数料は広告費の10%(月額最低5万円・税別)。最初の60分の無料相談では、サービスの案内はせず、医院の数字を一緒に見ます。

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この記事を書いたチーム株式会社Acquizeの運用チーム。自社でもWeb広告で集客する事業を運営しながら、受託先の予算運用を担当しています。記事中の考え方は、実際の運用で使っているものです。

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