まつエクの検索広告は、数字だけ見ると始めやすい業種です。キーワードプランナーで見ると、「まつエク」は月11万回検索され、ページ上部の入札単価(高額帯)は148円。同じ美容でも「脱毛」の約1,000円と比べると7分の1です。ところが、実際に出してみると予約は取れるのに、店の売上が思ったほど増えないという相談が多い業種でもあります。原因は、初回の単価が安く、広告の採算が2回目以降の来店で決まる商売なのに、初回の予約だけで広告を評価していることです。この記事では、まつエクサロンの広告を、2回目の来店まで含めた数字で組み立てる手順を書きます。
この記事の結論
- 01新規1人に払える広告費は、初回の売上ではなく12か月の来店の期待値から出す。2回目に来る割合が45%なら新規来店1件に約2,900円払えるが、20%なら約1,400円しか払えない。
- 02クリック単価は約150円と安いので、勝負は単価ではなく2回目に来る人を集められるか。初回の大幅割引で集めると、予約の単価は下がっても採算は悪くなる。
- 03予約の入口は自社に寄せ、予約・来店・2回目をクリックIDでつないで広告に戻す。夜の予約を受けられない店は、夜の配信を見直すだけで予約1件の費用が大きく変わる。
まつエクの検索は「大きく、安く、毎月ある」
まず、まつげまわりの検索の大きさを実測で見ます。Google広告のキーワードプランナー(日本・2025年10月〜2026年9月の平均)の数字です。
| 検索語 | 月間検索数(平均) | ページ上部の入札単価(高額帯) | 12か月の最大÷最小 |
|---|---|---|---|
| まつげパーマ | 135,000 | 142円 | 1.22倍 |
| まつエク | 110,000 | 148円 | 1.49倍 |
| パリジェンヌラッシュリフト | 18,100 | 434円 | 1.22倍 |
| まつげサロン | 14,800 | 170円 | 1.50倍 |
| まつエク 近く | 4,400 | 147円 | 1.86倍 |
| まつエク 持ち | 3,600 | 257円 | 1.52倍 |
| まつエク 安い | 1,000 | 176円 | 1.30倍 |
| (参考)脱毛 | 135,000 | 1,046円 | 1.82倍 |
読み取れることは3つあります。1つ目に、まつげパーマの検索がまつエクより多いこと。まつエクの店でも、まつげパーマのメニューがあるなら、こちらの方が入口として大きい場合があります。2つ目に、季節の動きが小さいこと。まつエクは最大と最小の月で1.5倍ほどで、脇脱毛のように4倍動く語とは違い、予算を年間でほぼ平らに置けます。3つ目に、単価が安いこと。1クリック150円前後なので、月に10万円の広告費でも650クリック以上買えます。
検索が大きく、単価が安く、季節に左右されにくい。条件だけ見ると広告向きの業種です。それでも採算が合わない店が多いのは、初回の売上の小ささに対して、広告の評価の仕方が合っていないからです。
新規1人に払える額は、12か月の来店から出す
まつエクは、まつげの生え変わりでエクステが取れていくので、3〜4週間ごとのリペア(付け足し)や付け替えで通う商売です。初回は新規価格で入ってもらい、2回目以降の通常価格の来店で回収します。広告の物差しも、初回ではなく、その後の来店まで含めた期待値で作ります。
新規1人の期待売上(12か月)
初回の売上 + 通常価格 × 2回目以降の来店回数の期待値
2回目以降の来店回数は「2回目に来る割合 ×(1 + p + p² + … )」。pは、来た人がその次も来る割合です。
許容CPA(新規来店1件)
期待売上 × 粗利率 × 広告に回す割合
新規のお客様1人が来店するまでに、広告費をいくらまで払えるか。予約1件・クリック1回の上限は、ここから割り戻します。
説明用の仮の数字で計算します。初回の新規価格が4,980円、通常価格が6,800円、来店は4週間ごとで12か月に最大13回。粗利率(施術者の歩合・材料を引いた後)は50%、そのうち30%を新規の広告に回すとします。2回目に来る割合が45%、その後は毎回80%が次も来る店の場合です。
2回目以降の来店回数 = 45% ×(1 + 0.8 + 0.8² + … + 0.8¹¹)= 45% × 4.66 = 約2.1回
期待売上 = 4,980円 + 6,800円 × 2.1回 = 約19,200円 → 許容CPA = 19,200円 × 50% × 30% = 約2,900円
初回の4,980円だけで考えると、広告に払えるのは数百円にしかなりません。2回目以降まで入れると、新規来店1件に約2,900円まで払えます。この差が、まつエクの広告で「予約は取れるのに儲からない」と「同じ予約数で利益が出る」を分けています。
次に、どんな人を集めたかで、この数字がどう変わるかを見ます。初回の価格を大きく下げたクーポンで集めた新規は、2回目に来る割合が下がり、その後の継続も弱くなりがちです。説明用の2つの層で比べます。
| 新規の層 | 2回目に来る割合 | その後の継続 | 12か月の来店回数 | 期待売上 | 許容CPA(新規来店) | 上限CPC |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 通常価格を見て来た新規 | 45% | 80% | 3.1回 | 19,229円 | 2,884円 | 196円 |
| 大幅割引で来た新規 | 20% | 70% | 1.7回 | 9,451円 | 1,418円 | 96円 |
上限CPCは、許容CPAに来店率(予約した人のうち実際に来る割合)85%と、クリックからの予約率8%を掛けた値です。
上限CPC = 許容CPA × 来店率 × 予約率
通常価格の層:2,884円 × 85% × 8% = 約196円 / 大幅割引の層:1,418円 × 85% × 8% = 約96円
相場が150円前後なので、通常価格の層を集められる店は、相場より上の単価でも採算が合います。大幅割引の層しか集められない店は、相場の単価でも赤字です。クーポンで予約率を8%から12%に上げても、上限CPCは約145円で、まだ相場に届きません。まつエクの広告は、単価の勝負ではなく、2回目に来る人を集められるかの勝負です。
2回目に来る割合の感度も見ておきます。同じ条件で、2回目の割合が30%なら許容CPAは約2,200円、60%なら約3,600円です。2回目の割合を15ポイント上げることは、広告に払える額を2割以上増やすのと同じ効果があります。初回の施術後に次回の予約をその場で取る、2回目の価格を初回の来店時に案内する、といった店側の取り組みが、そのまま広告の上限を引き上げます。
検索語はメニューと距離で分ける
まつエクの検索語は、大きく次の4つに分かれます。キャンペーン(または広告グループ)もこの単位で分け、広告文とLPを合わせます。
- メニュー名:「まつエク」「まつげパーマ」「パリジェンヌラッシュリフト」「ボリュームラッシュ」など。まつげパーマとまつエクは、通う周期も価格も違うので、別のキャンペーンにして別々に評価します。
- 地域名・駅名:「新宿 まつエク」「○○駅 まつげパーマ」。来店できる範囲の語だけを入れます。「まつエク 新宿」は月720回で、駅名ごとの検索は数百回の単位です。
- 「近く」「近所」:「まつエク 近く」「まつげパーマ 近く」はそれぞれ月4,400回。検索した人の現在地が商圏の中にある時だけ表示されるよう、地域の設定で絞ります。
- 悩み・条件:「まつエク 持ち」(月3,600回)「まつエク 安い」など。比べ始めた段階の人が多く、予約率は低めです。ここは検索語句レポートで予約・来店につながった語句を見てから広げます。
「近く」の検索は、地域設定と住所表示で受ける
「近く」を付けた検索は、Googleが検索した人の現在地を手がかりに結果を出します。広告側では、地域の設定を「所在地:ターゲット地域に所在地がある、または定期的に訪れているユーザー」にして、店から半径数キロなど商圏の範囲に絞ります。「所在地または関心」のままだと、商圏の外から調べている人にも出ます。あわせて、Googleビジネスプロフィールと広告アカウントをつないで住所のアセットを表示すると、広告に店までの距離や住所が出て、通える人がクリックしやすくなります。営業時間や定休日がビジネスプロフィールと実際で違っていると、予約の取り消しの原因になるので、月に1回は合っているか確かめます。
パリジェンヌラッシュリフトは、扱っている店だけが入れる
「パリジェンヌラッシュリフト」は月18,100回検索され、単価は434円と、まつげの語の中では高めです。施術名で探している人なので、そのメニューを扱っていない店が広告を出しても、クリックだけ取られて予約にはなりません。メニュー名で検索する人は、来店の前にその店のメニュー表と価格を確かめるので、LPのファーストビューにメニュー名と価格を出しておくと予約率が上がります。
予約の入口を自社に寄せる
まつエクのお客様の多くは、予約ポータルでサロンを探して予約します。ポータルは集客の大きな入口ですが、広告の着地先にポータルの店舗ページを置くと、広告から来た人が予約したかどうかが分からなくなります。ポータルの予約完了の画面には、広告のタグを置けないからです。

広告の着地先は自社のLPにし、予約は自社の予約システムかLINEの予約で受けます。予約システムがGoogle広告のコンバージョンタグに対応しているかを確認し、対応していなければ、予約ボタンのクリックを仮の成果にして、予約システムの予約一覧と週に1回突き合わせます。予約の時点で、URLに付いてくる広告のクリックID(gclid等)を予約データに保存できる形にしておくと、後で来店や2回目をつなげられます。
もう1つ、ポータルと自社の予約を並べて数えると、同じ人を二重に数えることがあります。広告を見てから、ポータルで店名を検索して予約する人もいるからです。月に1回、月の新規来店数と、経路ごとの新規予約の合計を並べて、合計の方が大きくなっていないかを見ます。
配信する時間は、予約を受けられる時間に合わせる
まつエクは、仕事や家事が終わった夜にスマホで探す人が多い業種です。ここで、予約を受ける手段が電話だけの店と、24時間ネットで予約できる店では、夜のクリックの価値がまったく違います。
当社が担当した来店・訪問型サービスの受託先では、時間帯ごとの広告の実績と問い合わせのデータを突き合わせたところ、20時以降は電話の受付時間外で、費用対効果がゼロでした。一方で8〜19時の間は、時間帯による差がありませんでした。受付ができない時間に出している広告費は、そのまま無駄になります。
まつエクの店で、1,000クリック(1クリック150円、計15万円)を時間帯ごとに分けた説明用の計算です。
| 時間帯 | クリック | 予約(ネット予約24時間) | 予約1件 | 予約(電話のみ・19時まで) | 予約1件 |
|---|---|---|---|---|---|
| 9〜12時 | 200 | 16件 | 1,875円 | 12件 | 2,500円 |
| 12〜18時 | 350 | 28件 | 1,875円 | 21件 | 2,500円 |
| 18〜21時 | 250 | 22.5件 | 1,667円 | 7.5件 | 5,000円 |
| 21〜24時 | 200 | 20件 | 1,500円 | 1件 | 30,000円 |
| 合計 | 1,000 | 86.5件 | 約1,734円 | 41.5件 | 約3,614円 |
ネット予約を24時間受けられる店では、夜の方がむしろ予約1件の費用が安くなります。電話のみの店では、21時以降の予約1件は30,000円で、全体の予約1件の費用も2倍以上になります。打ち手は2つで、ネット予約を入れて夜を取りにいくか、入れられないなら広告のスケジュールで受付時間外の配信を止めるか、入札を大きく下げます。時間帯の判断は、クリックではなく予約と来店の数で行い、最低でも4週間分のデータを、曜日をそろえて見ます。
広告文とLPで守る表示のルール
まつエクは、目のすぐ近くに施術する仕事なので、安全と資格の書き方に気を付けます。
美容師の免許と、施術者の表示
厚生労働省は、まつげエクステンションは美容行為で、仕事として行うには美容師の免許が必要としています。施術する場所は、保健所に美容所として届け出た店です。目の危害の相談が増えたことを受けて、厚生労働省は2008年と2010年に通知を出し、消費者庁も安全確保の対策を求めてきました。お客様の側も、施術者が美容師かどうかを気にしています。LPには、施術者が美容師の免許を持っていること、施術前にアレルギーや目の状態を確認することを書いておくと、初めての人の予約率が上がりやすくなります。
持ち・安全・価格の書き方
- 持ち:「1か月持つ」「取れない」の言い切りは、まつげの生え変わりや生活の仕方で変わるので書きません。景品表示法の不実証広告規制で、根拠となる資料を出せない効果の表示は不当表示とみなされます。
- 安全:「目にしみない」「ダメージゼロ」「絶対に安全」のような断定は避け、使っている接着剤の種類や、施術前のパッチテストの有無など、事実を書きます。
- 店販品:まつげ美容液などの化粧品で「まつげが伸びる」「生える」と書くと、化粧品の効能の範囲を超えます。
- 価格:「初回○円」は、本数・デザイン・オフ代が含まれるか、初回限定かを近くに書きます。「通常価格」と並べる二重価格は、その価格で実際に販売していた実績が必要です。
- 口コミ:店が依頼して書いてもらった口コミは、広告と分かる形で載せます。2023年10月から、広告であることを隠した表示(ステルスマーケティング)は景品表示法の不当表示です。
LP側で抜けやすい点
- 2回目以降の価格(リペア・付け替え・オフ代)が書かれておらず、初回の価格だけが大きく出ている。
- メニューごとの所要時間が無く、仕事帰りの人が予約してよいか判断できない。
- デザインの写真が、店のスタッフが施術したものかどうか分からない。
- 当日予約・夜の予約を受けられるかが、ファーストビューから分からない。
計測は予約・来店・2回目の3段で持つ
前の章までの計算のとおり、まつエクの広告は2回目の来店で採算が決まります。計測も、2回目まで持たないと判断できません。
① 予約と来店を分ける
予約は自社の予約システムで成果として数え、来店したかどうかは予約一覧と来店の記録を週に1回突き合わせます。無断キャンセルや当日の取り消しが多い語句・時間帯は、予約の数では良く見えても来店では悪いので、ここで見つけます。
② 2回目の来店を広告に戻す
予約時に保存したクリックIDを使い、初回の来店と2回目の来店を、それぞれ別のコンバージョンとしてオフラインで広告に戻します。2回目の来店は初回から3〜6週間後なので、Google広告のクリックから90日以内という取り込みの期限に十分間に合います。新規か既存かは、予約時の電話番号で来店履歴を照合して判定し、既存のお客様の予約は新規の成果から外します。
③ 入札に使うのは、件数が足りてから
1店舗の新規来店は月に数十件の規模です。2回目の来店はその半分以下になるので、入札の学習に使う件数としては足りないことが多い。件数が少ない間は、2回目の来店は観測用にして、入札は予約か初回来店で行い、月に1回、検索語のグループ別・時間帯別に2回目の割合を見て、割合の低いグループの予算を減らします。複数店舗をまとめて運用している場合は、店舗をまたいで件数を集めると、2回目の来店を入札に使える規模になることがあります。
まつエクの運用でよくある落とし穴
- 初回の予約単価だけで評価する:予約1件の費用が安いグループが、2回目の割合が低く、実は一番採算が悪いことがある。必ず2回目の割合と一緒に見る。
- 既存のお客様が広告をクリックしている:店名や「地域名+まつエク」で検索した常連のお客様が広告から予約し、新規として数えられている。電話番号で来店履歴を照合する。
- まつげパーマとまつエクを同じ評価にする:周期も価格も違うので、同じ許容CPAで評価すると片方を過小評価する。メニューごとに期待売上を出す。
- 席が埋まっている時間に広告を出し続ける:予約が取れない時間帯の広告は、クリックされても予約にならない。施術者の数と予約の空きに合わせて、広告のスケジュールを組む。
- 受付時間外に配信している:電話のみの店で夜の配信を止めていない。時間帯別の予約と来店を4週間分見て判断する。
- ポータルと自社の予約を足して新規数を数える:同じ人の二重計上で、広告の効果を大きく見積もる。月の新規来店数と合計を比べる。
現場で使っているチェックリスト
- 許容CPAを、初回ではなく12か月の来店の期待値と粗利率から出しているか
- 2回目に来る割合を、新規の集め方(検索語・価格)ごとに分けて見ているか
- まつエクとまつげパーマを、別のキャンペーンで別々に評価しているか
- 地域設定を「所在地」にし、「近く」の検索を商圏の中だけで受けているか
- 住所のアセットを出し、ビジネスプロフィールの営業時間が実際と合っているか
- 広告の着地先を自社のLPにし、予約時にクリックIDを保存しているか
- 予約を受けられない時間帯の配信を止めるか、入札を下げているか
- 美容師の免許、施術前の確認、2回目以降の価格をLPに書いているか
- 「持ち」「安全」「伸びる」の言い切りが、広告文・LP・店販品の説明に無いか
- 新規と既存を電話番号で照合し、既存の予約を新規の成果から外しているか
まとめ
まつエクの検索広告は、検索が大きく、単価も安く、季節の波も小さい。条件は良い業種です。それでも採算が合わないのは、初回の予約で評価して、2回目に来ない人まで同じ1件として数えているからです。
新規1人に払える額を12か月の来店から出し、2回目に来る人を集められる検索語と訴求に予算を寄せる。予約の入口を自社に寄せて、来店と2回目まで広告に戻し、予約を受けられない時間には出さない。この順番で組み立てると、同じ広告費でも、店に残る売上が変わってきます。
予算運用(リスティング広告の運用代行)
御社の新規のお客様が「2回目に来ているか」、広告のデータと一緒に見ませんか。
当社の予算運用では、Google・Yahoo!の検索広告の運用から、予約・来店・2回目の来店を広告に戻す計測の設計までまとめて担当します。運用手数料は広告費の10%(月額最低5万円・税別)・初期費用0円。最初の60分の無料相談では、サービスの案内はせず、御社のアカウントの検索語句と数字を一緒に見ます。
この記事を書いたチーム株式会社Acquizeの運用チーム。自社でもWeb広告で集客する事業を運営しながら、受託先の予算運用を担当しています。記事中の考え方は、実際の運用で使っているものです。

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