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整骨院の広告は保険・交通事故・自費で分ける|接骨院のリスティング広告設計

整骨院の広告は保険・交通事故・自費で分ける|接骨院のリスティング広告設計

「月10万円をリスティング広告に使っているのに、来るのは慢性の肩こりの人ばかりで、保険の患者さんも交通事故の患者さんも増えない」。整骨院・接骨院の広告相談で多い話です。原因の多くは、性質の違う3種類の患者さんを、1つのキャンペーン・1つの目標CPAで集めていることにあります。外傷(保険)、交通事故(自賠責)、慢性症状(自費)では、患者さん1人が院にもたらす粗利が5倍から10倍違います。さらに整骨院は柔道整復師法で、広告に書ける事項そのものが決められています。この記事では、その2つを前提に、整骨院の広告を数字で設計する手順を書きます。

この記事の結論

  1. 01柔道整復師法第24条により、整骨院の広告に書けるのは告示で認められた事項だけ。症状名・料金・施術方法・交通事故対応は広告文に書けない。広告文で差をつける余地は小さく、勝負はキーワードの分け方と配信地域・時間で決まる。
  2. 02患者1人の累計粗利は、説明用の数字で外傷が約8,300円、慢性(自費)が約23,100円、交通事故が約75,000円。許容CPAは群ごとに別々に計算し、キャンペーンも分ける。
  3. 03外傷の検索は、保険の施術だけで見ると採算ぎりぎりになりやすい。治った後に自費のメンテナンスへ移る割合まで含めて評価し、その割合を受付の台帳で毎月測る。
目次

整骨院の広告は「書けること」が法律で決まっている

最初に、整骨院の広告がほかの業種と決定的に違う点を押さえます。柔道整復の施術所の広告は、法律に並べられた事項以外は書けないという仕組み(いわゆるポジティブリスト)になっています。

柔道整復師法 第24条

書けるのは「列挙された事項」と「大臣が告示で指定した事項」だけ

柔道整復師である旨、氏名・住所、施術所の名称・電話番号・所在地、施術日・施術時間など。書ける事項でも、技能・施術方法・経歴に関わる内容にしてはいけない(第2項)。

告示で追加されている主な事項

ほねつぎ(接骨)、予約での施術、休日・夜間の施術、出張施術、駐車設備 など

「医療保険の療養費の支給申請ができる旨」は、骨折・脱臼の施術には医師の同意が必要な旨を併せて書く場合に限って書ける。

厚生労働省の検討会で長く議論されてきた内容は、2025年2月に「あはき・柔整広告ガイドライン」としてまとまりました。自治体の資料で違反の多い例として挙がっているのは、適応症(腰痛・肩こり・むちうち等)、料金や施術金額、技能・施術方法・流派名、交通事故の施術に関する表現です。労災や自賠責は医療保険に含まれないので、「各種保険取扱い」も避ける表現とされています。

広告文に入れたい言葉扱い代わりにできること
「○○駅徒歩3分」「駐車場5台」書ける(所在地・駐車設備)見出しの1本目に置く。商圏の検索ではいちばん効く
「夜20時まで」「日曜も施術」書ける(施術時間・休日の施術)受付時間と配信時間をそろえる(後述)
「予約優先」「当日予約可」書ける(予約に基づく施術)予約フォームへの導線を短くする
「腰痛・肩こりに」「むちうち専門」書けない(適応症・技能)キーワード側で症状を拾い、広告文は院の情報で答える
「交通事故治療0円」「保険で安く」書けない(交通事故・料金)キャンペーンを分けて入札と予算で調整する
「地域でいちばん」「必ず良くなる」書けない(景品表示法の面でも問題)使わない

ガイドラインでは、院のウェブサイトそのものは原則として広告に当たらないと整理されています。一方、検索広告の広告文やバナーは「誘引性・特定性・認知性」の3要件で見ると広告に当たる前提で作るのが安全です。広告から誘導する専用ページの扱いは判断が分かれうるので、表現を詰める段階で所管の保健所に確認するのが確実です。

ここから分かる運用上の結論は1つです。広告文で他院と差をつける余地は、駅・時間・予約・駐車場くらいしかありません。差がつくのは、どの検索に・いくらまで払うかの設計です。次の章から、その数字を作ります。

告示の範囲だけで広告文を組む

書ける事項が限られていても、見出し15本・説明文4本は埋められます。当社が組む時は、見出しを次の4つの役割に割り振ります。

  • 場所:「○○駅東口から徒歩3分」「○○通り沿い・駐車場5台」。検索した人が最初に知りたいのは通えるかどうかなので、距離は分単位・台数は数字で書く。
  • 時間:「平日20時まで受付」「土日祝も施術」。実際の受付時間と1分でもずれていたら書かない。
  • 予約:「Web予約は24時間受付」「当日の予約も受付」。予約枠が埋まりがちな曜日がある院は、空きが多い曜日の配信を厚くする。
  • 院の名前と業態:「ほねつぎ ○○接骨院」。「ほねつぎ」「接骨」は告示で認められた表記で、外傷の検索をした人には意味が通じやすい。

説明文には、柔道整復師が施術する旨と所在地・施術日を入れます。症状の話をしたくなったら、それは広告文ではなくキーワードの設計で解決する、と決めておくと迷いません。

患者さん1人の粗利は、3つの群で5倍以上違う

整骨院に来る患者さんは、支払いの仕組みで大きく3つに分かれます。

  • 外傷(保険):急性・亜急性のけが(打撲・捻挫・挫傷など)。療養費として保険者に請求し、窓口では一部負担金を受け取る。1回あたりの単価は低く、治れば通院は終わる。
  • 交通事故(自賠責):自賠責保険の施術。1回あたりの単価が高く、通院期間も数か月に及ぶことが多い。
  • 慢性症状(自費):慢性的な肩こり・腰の張り・姿勢など。療養費の対象外なので自費メニューになる。

療養費の単価は国が決めています。2024年6月施術分からの改定で、初検料は1,550円、初検時相談支援料は100円、再検料は410円です。1回あたりの総額は部位数や施術内容で変わるので、以下の計算では院の実績に置き換えてもらう前提で、説明用の仮の数字を使います。

患者1人の累計粗利 =(初回の売上 + 2回目以降の売上 ×(平均通院回数 − 1))× 粗利率

許容CPA(予約1件) = 患者1人の累計粗利 × 広告に回してよい割合 × 予約から来院までの割合

群初回2回目以降平均通院累計売上粗利率累計粗利
外傷(保険)3,200円1,700円8回15,100円55%約8,300円
慢性(自費)5,500円5,500円6回33,000円70%23,100円
交通事故(自賠責)5,000円5,000円25回125,000円60%75,000円

粗利率は、売上から施術者の時間あたり人件費と消耗品を引いた割合です。保険の施術は療養費の申請・返戻対応の事務が乗るので、自費より低めに置いています。

20,00040,00060,0001回5回10回15回20回25回通院回数患者1人の累計粗利(円)外傷(保険)慢性(自費)交通事故(自賠責)
図1 通院回数ごとの患者1人の累計粗利(説明用の数字)。外傷は8回で約8,300円で止まり、交通事故は25回まで積み上がる。

同じ「予約1件」でも、交通事故の患者さんは外傷の患者さんの約9倍の粗利になります。この差を無視して1つの目標CPAで運用すると、自動入札は「いちばん安く予約が取れる検索」に寄っていきます。整骨院の場合、それはたいてい慢性症状の検索で、交通事故の検索には入札が上がりません。冒頭の「肩こりの人ばかり来る」は、こうして起きます。

許容CPAを群ごとに出し、実際のCPAと並べる

広告に回してよい割合を30%、予約から来院までの割合を外傷85%・交通事故80%・慢性70%として、許容CPAを出します。慢性は「様子見で予約して来ない」人が多いので来院率を低めに置いています。実際のCPAは、クリック単価と予約率から出した説明用の数字です。

群累計粗利許容CPAクリック単価予約率実際のCPA許容÷実際
外傷(保険)約8,300円約2,120円150円8.0%1,875円1.13倍
慢性(自費)23,100円約4,850円120円5.0%2,400円2.02倍
交通事故(自賠責)75,000円18,000円600円6.0%10,000円1.80倍

外傷の群は、許容と実際の差が13%しかありません。予約率が8.0%から7.0%に下がるだけで実際のCPAは約2,140円になり、許容を超えます。ぎっくり腰や寝違えの検索は、いちばん「整骨院らしい」検索なのに、保険の施術だけで評価すると赤字すれすれです。

外傷の価値は「自費への移行」で決まる

外傷で来た患者さんの一部は、けがが治った後も体の調子を整えるために自費のメンテナンスで通い続けます。この移行を評価に入れると数字が変わります。外傷の患者さんの20%が、治った後に自費メニューへ平均4回通うとします。

移行による追加粗利 = 20% × 4回 × 5,500円 × 70% = 3,080円

外傷の累計粗利 8,305円 + 3,080円 = 11,385円 → 許容CPA = 11,385円 × 30% × 85% ≒ 2,900円

予約1件あたりの許容CPAと実際のCPA(説明用の数字)外傷 許容2,118円外傷 実際1,875円外傷 許容(自費移行込み)2,903円慢性 許容4,851円慢性 実際2,400円交通事故 許容18,000円交通事故 実際10,000円外傷は許容と実際の差が小さく、自費への移行を入れて初めて余裕が出る
図2 群ごとの許容CPAと実際のCPA(説明用の数字)。外傷は自費への移行を入れて初めて余裕が出る。

移行率は院によって5%から40%くらいまで差があります。受付の台帳で「初回が外傷だった患者さんのうち、療養費の施術が終わった後も来ている人」を数えるだけで出せる数字なので、毎月集計してください。移行率が10%を下回る院では、外傷の検索に予算を寄せるほど利益が減ります。

キーワードは3群でキャンペーンを分ける

許容CPAが2倍から8倍違う検索を、同じ予算・同じ目標値のキャンペーンに入れておく理由はありません。群ごとにキャンペーンを分け、予算と入札を別々に持ちます。

整骨院・接骨院の検索を、外傷・交通事故・慢性症状の3つのキャンペーンに分ける構造図
図3 検索を3群に分け、それぞれに許容CPAと予算を持たせる。広告文に書ける内容はどの群でも告示の範囲に限られる。
キャンペーンキーワードの例検索した人の状態入札の考え方
外傷ぎっくり腰 ○○駅/捻挫 整骨院 ○○市/寝違え 近く今日・明日に行きたい。距離と時間で選ぶ許容CPA約2,100〜2,900円。配信地域を狭く
交通事故交通事故 整骨院 ○○市/むちうち 通院 ○○区保険会社とのやり取りを含め、通院先を比べている許容CPA18,000円。クリック単価が高くても入札を上げる
慢性(自費)肩こり ○○駅/骨盤 整骨院 ○○市急ぎではない。料金と雰囲気で比べる許容CPA約4,850円。来院率を見て調整
院名(指名)院名・院名の略称すでに院を知っている最小限の予算。増分はほぼ無いことが多い

交通事故のキャンペーンは、キーワードで交通事故の検索を拾い、広告文には交通事故と書かない形になります。広告文は院名・駅・施術時間・予約・駐車場で組み、検索した人の「どこに通うか」という問いに、場所と時間で答えます。キーワードの段階で群を分けておけば、広告文に症状を書かなくても、入札と予算で狙いをつけられます。

院名のキャンペーンは、平均CPAがいちばん安く見えます。ただ、院名で検索する人は広告が無くても自然検索やGoogleマップから来院する人が大半です。広告で生まれた予約(増分)を見るなら、2週間だけ院名の広告を止めて、総予約数が減るかを比べます。減らなければ、その予算は外傷か交通事故に回せます。

配信地域と時間は、カルテと受付時間から決める

整骨院の商圏は狭く、来院の大半は自宅か勤務先の近くからです。配信地域を市全体や県全体に広げると、通えない人のクリックに広告費を払うことになります。

配信地域:患者さんの80%が入る範囲に絞る

  • ① 直近6か月の新規患者さんの住所(郵便番号まで)をカルテから抜き出す。勤務先の近くで通う人が多い駅前の院は、勤務先の所在地も聞いておく。
  • ② 院からの距離ごとに人数を数え、累計で80%に達する距離を出す。住宅街の院なら半径2〜3km、駅前の院なら駅の乗降圏に偏ることが多い。
  • ③ その範囲を配信地域にし、範囲の外は配信しない。地域の設定は「所在地」(その地域にいる・よくいる人)を選び、「関心」(その地域に関心がある人)を含めない。
  • ④ 群ごとに地域を変える。外傷は今いる場所の近くを探すので狭く、交通事故は少し遠くても通う人がいるので外傷より広げる。

配信時間:受付できない時間に広告を出さない

整骨院の予約は電話が多く、受付時間外の電話は取れません。広告は24時間出しておけますが、電話が取れない時間のクリックは予約になりにくい。Web予約が無い院は、受付時間の30分前から終了30分前までに配信を絞るのが出発点です。Web予約がある院は、夜間のクリックが翌朝の予約になっているかを、予約の受付時刻とクリックの時刻を突き合わせて確かめてから判断します。

計測は「予約」と「来院」を分けて取る

整骨院の広告でよくあるのは、電話ボタンのタップを成果として数え、それがそのまま予約だと思い込んでいるケースです。タップしても話し中だった、料金を聞いただけで切った、というものも全部1件に数えられます。

  • 電話:ボタンのタップは「電話をかけようとした」までしか分からない。受付に「何を見て電話したか」を聞く欄を設け、広告経由の予約件数を台帳で数える。
  • Web予約:予約完了ページの表示を成果にする。入力フォームの表示や送信ボタンのクリックは成果にしない。
  • 来院:予約のうち実際に来た割合を群ごとに出す。慢性の群は無断キャンセルが多く、来院率が外傷より15ポイント以上低いことも珍しくない。

Web予約の入力欄に広告のクリックID(gclid)を隠し項目で持たせておくと、来院したかどうかを後から広告側に戻せます。件数が少ない院でも、群ごとの来院率を毎月出すだけで、許容CPAの計算はずっと正確になります。

検索語句の見直しも、群ごとに行います。当社の自社運用で検索語句を分析した時は、検索語句の29%が価格・相場を調べる語句だったことが分かり、見出しを差し替えました。整骨院でも「整骨院 料金」「保険 いくら」のような検索はかなりの割合を占めます。ただし整骨院の広告文には料金を書けないので、見出しで答えることはできません。こうした検索は来院率を群と分けて集計し、許容CPAを割るなら除外する、という判断になります。

整骨院の広告で実際に起きる落とし穴

よくある失敗と見分け方

  • 慢性症状の人を保険で集める:療養費の対象は急性・亜急性の外傷で、慢性の肩こりは対象外です。広告やページで「保険で肩こりも」と受け取れる見せ方をすると、規制違反に加えて、後から患者さんとのトラブルや療養費の返戻につながります。
  • 通院が長期・頻回になる:2024年10月施術分から、初検日から5か月を超え、かつ月10回以上の施術を続けている患者さんは、償還払いに変更できる類型に加わりました。交通事故以外で通院回数を前提にLTVを高く見積もるのは危険です。
  • 求人の検索に広告費を使う:「柔道整復師 求人」「整骨院 バイト」は「整骨院」を含むので、インテントマッチで拾われます。検索語句レポートで実際に出ていたら除外します。
  • 交通事故のクリック単価に驚いて止める:クリック単価が外傷の4倍でも、許容CPAは約8倍です。クリック単価ではなく、許容CPAとの比で判断します。

4つ目は特に多い失敗です。管理画面のクリック単価の列は目立つので、600円という数字だけで「高すぎる」と判断されがちです。上の表のとおり、交通事故の群は許容CPAに対して実際のCPAが約55%に収まっています。止めるかどうかは、許容÷実際の比が1を割っているかで決めます。

チェックリスト

  1. 広告文・見出し・説明文・アセットに、症状名・料金・施術方法・交通事故の表現が入っていないか
  2. 療養費の支給申請に触れる場合、骨折・脱臼には医師の同意が必要な旨を書いているか
  3. 外傷・交通事故・慢性(自費)・院名で、キャンペーンと予算を分けているか
  4. 群ごとに、累計粗利・来院率・許容CPAを計算しているか
  5. 外傷から自費メンテナンスへの移行率を、受付の台帳で毎月出しているか
  6. 配信地域を、新規患者さんの80%が入る範囲に絞り、「所在地」で設定しているか
  7. 電話の受付時間と、広告の配信時間をそろえているか
  8. 電話タップではなく、広告経由の予約件数・来院件数を台帳で数えているか
  9. 院名の広告を止めた期間を作り、増分を確かめたか
  10. 求人・資格などの検索語句が実際に出ていないか、検索語句レポートを週1回見ているか

まとめ

整骨院の広告は、広告文に書けることが法律で決まっているので、他院との差は文章ではつきません。差がつくのは、外傷・交通事故・慢性という粗利の違う3群を分け、群ごとの許容CPAで入札と予算を持つ設計です。

その計算に必要な数字(平均通院回数、来院率、自費への移行率)は、広告の管理画面ではなく受付の台帳にあります。台帳の数字を月に1回広告の設計に戻す。それだけで、同じ広告費で来る患者さんの構成が変わります。

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この記事を書いたチーム株式会社Acquizeの運用チーム。自社でもWeb広告で集客する事業を運営しながら、受託先の予算運用を担当しています。記事中の考え方は、実際の運用で使っているものです。

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