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整体の広告は2回目の予約率で決まる|整体院のリスティング広告の採算設計

整体の広告は2回目の予約率で決まる|整体院のリスティング広告の採算設計

「初回2,980円にしたら広告からの予約は倍になった。なのに、月末に数えると売上はほとんど増えていない」。整体院の広告で、いちばんよく聞く話です。整体は保険が使えない自費の業態なので、院の利益は初回ではなく、2回目以降に通ってもらえるかで決まります。広告の管理画面に出るのは初回の予約までで、2回目の予約は台帳にしか残りません。この記事では、2回目の予約率から許容CPAを出す計算、予約枠から広告費の上限を決める方法、整体ならではの表現の注意点を、数字と手順で書きます。

この記事の結論

  1. 01整体の許容CPAは2回目の予約率でほぼ決まる。説明用の数字では、2回目の予約率が30%から50%に上がると、許容CPAは約2,360円から約3,700円になる。
  2. 02予約枠が埋まりつつある院では、初回を安くして件数を取るほど1枠あたりの粗利が薄くなる。枠の上限から広告費の上限を逆算し、上限に近い院ほど初回価格を下げすぎない。
  3. 03整体は国家資格の業態ではないので、「治る」「治療」や医療機関と誤認させる表現は使えない。初回価格の「通常○円」表示も、実際にその価格で施術していた期間が無ければ景品表示法上の問題になる。
目次

整体の広告は「初回」ではなく「2回目」で採算が決まる

整体院の売上は、ほぼすべてが自費の施術です。1回の単価は院が自由に決められる一方で、1人の患者さんが何回通うかは院によって大きく違います。広告の採算を考える時に見るべき数字を、先に定義しておきます。

2回目の予約率

初回に来院した人のうち、2回目を予約した人 ÷ 初回に来院した人

初回の帰りがけ、または1週間以内に次回を予約したかどうか。受付の台帳か予約システムで数える。

次回継続率

n回目に来た人のうち、n+1回目も来た人 ÷ n回目に来た人

2回目以降の通院が続く割合。3回目以降はほぼ一定になる院が多いので、1つの数字で近似する。

次回継続率をq、2回目の予約率をp、通常の1回の粗利をgとすると、2回目以降に通う回数の期待値は p ÷(1 − q)回です。ここから、初回に来た人1人が生む粗利(LTV)を出せます。

初回に来た人1人のLTV = 初回の粗利 + p ×(1 ÷(1 − q))× g

許容CPA(予約1件) = LTV × 広告に回してよい割合 × 予約から来院までの割合

説明用に、通常料金6,600円・1回あたりの施術原価(施術者の時間あたり人件費と消耗品)1,650円、つまり1回の粗利g=4,950円、次回継続率q=80%、広告に回してよい割合30%、来院率90%と置きます。初回2,980円なら、初回の粗利は2,980円−1,650円=1,330円です。

2回目の予約率2回目以降の平均回数LTV(粗利)許容CPA
10%0.5回3,805円約1,030円
20%1.0回6,280円約1,700円
30%1.5回8,755円約2,360円
40%2.0回11,230円約3,030円
50%2.5回13,705円約3,700円
1,0002,0003,0004,00010%20%30%40%50%60%2回目の予約率許容CPA(予約1件・円)実際のCPA 2,000円次回継続80%次回継続70%
図1 2回目の予約率と許容CPA(初回2,980円・説明用の数字)。次回継続率が70%に落ちると、同じ予約率でも許容CPAは2割以上下がる。

実際のCPAが2,000円の院なら、2回目の予約率が約25%を下回ったところで赤字に転じます。予約が倍になっても売上が増えない院の多くは、初回の値下げで2回目の予約率が10%台まで落ちていることが原因です。管理画面のCPAは下がって見えるので、台帳を見ないと気づけません。

検索・広告クリックから初回の予約・来院、2回目の予約、継続して通うまでの流れと、広告の管理画面で見える範囲を示した図
図2 広告の管理画面で見えるのは初回の予約まで。採算を分ける2回目の予約は、予約台帳でしか見えない。

初回価格は「件数」ではなく「粗利−広告費」で選ぶ

初回価格を下げると予約率(クリックから予約までの割合)は上がり、CPAは下がります。一方で、「安いから一度だけ」という人が増え、2回目の予約率は下がります。3つの初回価格を、クリック単価180円・次回継続率80%で比べます(予約率と2回目の予約率は説明用の数字です)。

初回価格予約率実際のCPA2回目の予約率LTV(粗利)許容CPA
2,980円9.0%2,000円30%8,755円約2,360円
4,400円7.0%約2,570円42%13,145円約3,550円
6,600円(割引なし)4.5%4,000円55%約18,560円約5,010円

CPAだけを見れば2,980円がいちばん安く、割引なしの半分です。ただ、許容CPAに対する余裕で比べると、2,980円は1.18倍、4,400円は1.38倍、割引なしは1.25倍で、中間の4,400円がいちばん余裕があります。どれが最適かは院ごとの予約率と2回目の予約率で変わるので、初回価格を変えたら最低4週間は台帳で2回目の予約率を取り、この表を自院の数字で埋めてから決めます。

回数券で2回目の予約率を「作らない」

初回に回数券を勧めると、2回目の予約率は見かけ上すぐに上がります。ただ、これは前払いで縛っているだけで、患者さんが納得して通っているかどうかとは別の数字です。回数券の途中で来なくなる人、返金を求める人が増えると、口コミの評価と次回継続率の両方が落ちます。広告の評価に使う2回目の予約率は、回数券の購入とは分けて、実際に2回目の予約を入れたかどうかで数えます。回数券の購入率は別の列で持ち、初回価格や広告の群ごとに比べると、どこから来た人が無理なく通っているかが見えます。

予約枠から、広告費の上限を逆算する

整体院には、施術者の人数と営業時間で決まる予約枠の上限があります。枠が埋まっていれば、広告で予約を増やしても受け入れられません。広告費をいくらまで使うかは、CPAより先に空いている枠の数で決まります。

月の枠数 = 施術者2名 × 1日8枠 × 25日 = 400枠

既存の患者さんで72%が埋まっている → 空き枠 = 400 × 28% = 112枠

新規1人が初月に使う枠 = 1 + 2回目の予約率 ×(1 + 0.8 + 0.8²) ※週1回の通院で初月に最大4回

2回目の予約率が高い初回価格ほど、新規の患者さんは初月に多くの枠を使います。つまり、受け入れられる新規の人数が減ります。112枠を上限まで使った時の、月の粗利と広告費を比べます。

初回価格新規1人が初月に使う枠受け入れられる新規必要な予約広告費粗利−広告費
2,980円1.73枠約65人約72件約14.4万円約42.2万円
4,400円2.02枠約55人約61件約15.8万円約56.9万円
6,600円(割引なし)2.34枠約48人約53件約21.3万円約67.5万円
予約枠の上限まで新規を入れた時の、月の粗利−広告費初回2,980円422,443円初回4,400円569,064円初回から6,600円675,159円枠が埋まる院では、初回を安くして件数を取るほど1枠あたりの粗利が薄くなる
図3 予約枠112枠を上限まで使った時の、月の粗利−広告費(説明用の数字。粗利は新規の患者さんが継続して通う分まで含めたLTV)。

枠が足りない院では、割引なしが2,980円の約1.6倍の利益になります。広告費は割引なしの方が多くかかりますが、同じ枠からより多くの粗利を生む患者さんで埋まるからです。逆に、空き枠が多く、新規を何人でも受けられる院では、件数の出る初回価格の方が有利になることがあります。初回価格の正解は、枠の埋まり具合で変わります。

なお、この計算は「新規の患者さんが初月に使う枠」だけを見た簡略版です。2か月目以降も通い続ける人が増えると、既存の患者さんで埋まる割合(ここでは72%)自体が上がっていきます。3か月ごとに埋まり具合を測り直して、式の72%を更新してください。

実務では、月初に翌月の空き枠を数え、上の式で受け入れられる新規の人数と必要な予約数を出し、CPAの実績を掛けた額を月の広告予算の上限にします。上限を超えて予算を足すと、予約が取れても「予約が取りにくい院」になり、既存の患者さんの継続率まで落ちます。

空き枠は「曜日×時間帯」で数える

月の合計で空き枠が112あっても、土曜の午前や平日の夕方はすでに埋まっていて、空いているのは平日の昼だけ、ということがよくあります。広告で取れた新規の患者さんが希望する時間に入れなければ、予約は取れても初回の来院が先延ばしになり、来院率が落ちます。空き枠は予約システムから曜日×2時間ごとに出し、空きが多い時間帯に来やすい人(近隣の在宅勤務の人、主婦層、シフト勤務の人)に届くよう、配信の曜日・時間帯で入札を強めます。埋まっている時間帯への配信は弱め、予算の上限もこの空きの分布で見直します。

キーワードは「症状で探す人」と「ほぐしを探す人」を分ける

整体の検索は、同じ「整体」を含んでいても目的が大きく違います。2回目の予約率で見ると差がはっきりするので、群を分けてキャンペーンを持ちます。

群キーワードの例検索した人の目的2回目の予約率の傾向
症状×地域腰痛 整体 ○○駅/肩こり 整体 ○○市特定の不調を何とかしたい高い。継続を前提に来る
専門メニュー産後 骨盤 整体 ○○市/姿勢 整体 ○○区特定のメニューを探している高い。回数を前提に比べている
近さ整体 近く/整体 ○○駅近くの院をとりあえず探す中くらい。初回価格に左右されやすい
リラクゼーションもみほぐし ○○駅/マッサージ 安い疲れを取りたい。1回で満足する低い。クーポンを渡り歩く人が多い

リラクゼーション目的の検索は予約率が高く、CPAは安く見えます。ここが初回の値下げと組み合わさると、予約は増えて2回目の予約率だけが落ちる、冒頭の状態になります。群ごとに2回目の予約率を出し、許容CPAを群ごとに持つことで、安く見える群に予算が流れるのを止められます。

配信地域は「2回目の予約率」で決める

整体は通い続けてもらう業態なので、配信地域は「来院できる距離」ではなく「通い続けられる距離」で決めます。台帳の住所から院までの距離を出し、距離ごとに2回目の予約率を比べると、多くの院で遠くなるほど下がります。例えば、2km以内は45%、2〜5kmは30%、5km超は15%という院なら(説明用の数字)、5km超から来た初回の人は許容CPAの計算上ほとんど利益を残しません。2回目の予約率が損益分岐を下回る距離の外は、配信地域から外すか、入札を下げます。

広告文は「通う理由」を予告する

2回目の予約率を上げるには、広告文の段階で「1回で終わらない」ことを伝えておくのが効きます。例えば「初回は姿勢と動きの確認から」「通院の目安を初回にご説明」のように、初回で何をして次に何をするかを書きます。1回で満足したい人はクリックしなくなり、予約率は少し下がりますが、2回目の予約率は上がります。上の計算のとおり、整体の採算はこの交換で良くなることが多いです。

整体ならではの、広告表現の注意点

整体は、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師のような国家資格に基づく業態ではありません。整骨院と違って広告に書ける事項を列挙した法律は無いので、症状名をキーワードや広告文に入れること自体はできます。ただし、次の線は越えないようにします。

書きたくなる表現問題言い換えの例
「腰痛が治る」「根本治療」医行為と誤認させる。効果の断定は景品表示法の優良誤認にもつながる「腰まわりの張りに向けた施術」「動きの確認から始めます」
「整体医院」「○○治療院」医療機関と誤認させる名称・表記「○○整体院」「整体サロン」
「マッサージ」を自院の施術名に使うあん摩マッサージ指圧師の業務と混同される「ほぐし」「整体」と書く。キーワードとして入札するのは別
「通常8,800円→初回2,980円」通常価格で施術した実績が無いと二重価格表示の問題「初回2,980円(2回目以降6,600円)」と事実だけを書く
「3回で改善」「満足度98%」根拠の無い効果・数字使わない。実数の根拠がある時だけ、条件を添えて書く

二重価格表示は、比較に使う「通常価格」が、実際にその価格で販売していた価格かどうかで判断されます。実務の目安としてよく使われるのは、値引き開始前の8週間のうち過半の期間、その価格で販売していたかです。開業時から初回価格だけで集客していて、通常価格で初回を受けたことが無い院は、「通常○円」を書かないのが安全です。

手技の施術による危害も、行政が注視しているテーマです。国民生活センターが2012年に公表した資料では、2007年度以降の約5年間に手技による施術の危害相談が825件寄せられ、うち「整体」「カイロプラクティック」「矯正」を含むものが366件(44.4%)でした。強い刺激を売りにする表現や、医療機関の受診を妨げるような表現は、広告審査以前に院の信用を損ないます。

配信時間と計測は「予約を受けられるか」で決める

電話予約が中心の院では、電話を取れない時間のクリックはほとんど予約になりません。当社が受託先(来店・訪問型サービス)で時間帯ごとの実績と問い合わせデータを突き合わせた時は、20時以降は電話受付外で費用対効果がゼロと分かり、8〜19時は時間帯による差がありませんでした。配信時間は、この「受けられるか」の線で切るのが出発点です。

  • 電話予約が中心:受付時間の外は配信しない。昼休みに電話を取れない院は、その時間も止める。
  • Web予約がある:夜間のクリックが予約になっているかを、予約の受付時刻で確かめてから夜間の配信を判断する。仕事帰りに予約を入れる人が多い院では、夜間が一番効くこともある。
  • 成果の定義:Web予約の完了ページを成果にし、予約ボタンのクリックは成果にしない。電話は受付で「何を見て電話したか」を聞いて台帳に残す。
  • 2回目の予約:Web予約に広告のクリックID(gclid)を隠し項目で持たせ、台帳と突き合わせて、群ごと・初回価格ごとの2回目の予約率を月1回出す。

2回目の予約まで広告側に戻せると、自動入札が2回目まで通う人を学ぶようになります。ただし件数が月に数件では学習に足りません。その段階では、入札の対象は初回の予約のままにして、群ごとの予算配分を2回目の予約率で人が決める方が安定します。

整体院の広告で実際に起きる落とし穴

よくある失敗と見分け方

  • CPAが下がったのを改善と判断する:初回価格を下げた月にCPAが下がっても、2回目の予約率が下がっていれば利益は減っています。CPAと2回目の予約率は必ず並べて見ます。
  • 整体師を目指す人の検索に広告費を使う:「整体師 なるには」「整体 スクール」は「整体」を含むので拾われます。検索語句レポートで実際に出ていたら除外します。
  • 予約枠を超えて予算を足す:予約が取りにくくなると、既存の患者さんの次回予約が先送りになり、次回継続率が下がります。枠の上限から出した予算を超えない。
  • ポータルの予約を広告の成果に混ぜる:予約サイト経由の予約は広告と別に数えます。混ぜると、広告の2回目の予約率がポータルの数字に引っ張られます。

1つ目は、レポートの作り方で防げます。月次のレポートに「CPA」の列しか無いと、初回価格を下げた月は必ず良く見えます。当社では、CPAの隣に2回目の予約率と「2回目まで来た人1人あたりの広告費」の列を必ず置きます。CPA2,000円で2回目の予約率が30%なら、2回目まで来た人1人あたりの広告費は約7,400円(2,000円÷90%÷30%)です。この列が前の月より上がっていれば、CPAが下がっていても改善とは書きません。

チェックリスト

  1. 初回に来た人のうち、2回目を予約した割合を台帳で毎月出しているか
  2. 次回継続率(3回目以降)を出し、LTVと許容CPAを計算しているか
  3. 初回価格を変えた時、4週間以上の2回目の予約率で評価したか
  4. 翌月の空き枠から、受け入れられる新規の人数と広告予算の上限を出しているか
  5. 症状×地域・専門メニュー・近さ・リラクゼーションで、キャンペーンと許容CPAを分けているか
  6. 広告文に「治る」「治療」や、医療機関と誤認させる表記が入っていないか
  7. 「通常○円」を書く場合、その価格で実際に施術していた期間があるか
  8. 配信時間を、電話・Web予約を受けられる時間に合わせているか
  9. Web予約の完了を成果にし、クリックIDを台帳と突き合わせているか
  10. 整体師志望・スクールの検索語句が出ていないか、週1回確認しているか

まとめ

整体院の広告で見るべき数字は、CPAではなく2回目の予約率です。初回を安くすれば予約は増えますが、2回目の予約率が下がれば利益は減ります。そして、予約枠が埋まりつつある院ほど、件数より1人あたりの粗利が効いてきます。

2回目の予約率も、次回継続率も、空き枠も、広告の管理画面には出てきません。台帳の数字を月に1回、初回価格・キーワードの群・広告予算の上限に戻す。この往復ができている院とできていない院では、同じ広告費でも残る利益がはっきり変わります。

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この記事を書いたチーム株式会社Acquizeの運用チーム。自社でもWeb広告で集客する事業を運営しながら、受託先の予算運用を担当しています。記事中の考え方は、実際の運用で使っているものです。

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