「無料体験にしたら予約が月30件を超えたのに、入会は先月より減った」。パーソナルジムの広告相談で多い話です。原因の多くは、広告の成果を「体験予約」の件数で見ていることにあります。パーソナルジムは、検索から入会までに「体験予約→来店→入会」の3段があり、体験の価格や接客で各段の割合が大きく動きます。予約の件数とCPAだけ見ていると、入会が減っていることに気づけません。この記事では、契約の形ごとの粗利から許容CPAを出し、体験価格・キーワード・計測を入会1件の費用で決める手順を書きます。
この記事の結論
- 01入会1件の累計粗利は、説明用の数字でコース型が約18.9万円、月額制が約15.8万円、回数券が約4.8万円。許容CPAは「体験予約1件」に割り戻して、契約の形ごとに出す。
- 02体験予約1件の許容CPAは、体験に来た人の入会率にそのまま比例する。説明用の数字では、入会率が約19%(月額制は約22%)を下回ると赤字。広告の良し悪しは、入会率と一緒にしか判断できない。
- 03無料体験は予約の件数を最大にするが、入会1件あたりの実質費用は有料体験の1.5倍以上になる例が多い。体験価格は入会1件の費用で比べて決める。
パーソナルジムの広告は「3段のファネル」で見る
パーソナルジムの検索広告で取れるのは、ほとんどが「体験予約」です。入会はその後、店舗での体験とカウンセリングを経て決まります。広告の管理画面に出るのは1段目までで、2段目・3段目は店舗の台帳にしかありません。

体験予約のCPA
広告費 ÷ 体験予約の件数
管理画面で見えるCPA。体験の価格を下げるほど良くなる。
入会1件あたりの費用(CPO)
広告費 ÷ 入会の件数 = 体験予約のCPA ÷(来店率 × 入会率)
事業として見るべき数字。管理画面には出ないので、台帳と突き合わせて出す。
体験予約のCPAが8,000円でも、来店率75%・入会率30%なら入会1件は約35,600円です。来店率が65%、入会率が22%に落ちれば約55,900円になります。同じCPAで、入会1件の費用が1.6倍近く違います。
入会1件の粗利は、契約の形で4倍違う
パーソナルジムの契約は、大きく3つの形に分かれます。
- コース型:2か月16回などの期間・回数を一括で契約する。単価は高いが、終わった後に続けるかどうかで差が出る。
- 月額制:月4回・月8回などの定額。1回の契約額は低いが、続く月数で累計が決まる。
- 回数券:10回券など。気軽に始められる反面、使い切ったら終わる人が多い。
以下は、院の実績に置き換えてもらう前提の説明用の仮の数字です。粗利率は、売上からトレーナーの人件費(歩合を含む)と店舗の変動費を引いた割合で、マンツーマンで1時間を使う業態なので55%前後に置いています。
入会1件の累計粗利 = 契約額 × 粗利率 + 継続する割合 × 継続分の売上 × 粗利率
体験予約1件の許容CPA = 累計粗利 × 広告に回してよい割合 × 来店率 × 入会率
| 契約の形 | 契約内容 | 最初の売上 | 継続の想定 | 累計粗利 |
|---|---|---|---|---|
| コース型 | 2か月16回 | 300,000円 | 30%が月額制(月36,000円)へ4か月 | 188,760円 |
| 月額制 | 月4回 | 入会金22,000円+月36,000円 | 平均7か月 | 158,400円 |
| 回数券 | 10回 | 88,000円 | 継続なし | 48,400円 |
入会金は事務の手間しか乗らないので粗利率90%、ほかは55%で計算しています。コース型は165,000円(300,000円×55%)に、継続分の23,760円(30%×4か月×36,000円×55%)が乗ります。
同じ「入会1件」でも、回数券での入会はコース型の約4分の1の価値です。回数券を入口に置いているジムは、入会件数が増えても利益が増えていないことがあります。台帳で入会を数える時は、契約の形ごとに分けて数えます。
許容CPAは「入会率」にそのまま比例する
広告に回してよい割合を30%、体験予約から来店までの割合を75%とし、体験に来た人の入会率をコース型30%・月額制45%・回数券50%とします。実際のCPAは、クリック単価320円・体験予約率4.0%で8,000円(説明用の数字)です。
| 契約の形 | 累計粗利 | 入会率 | 体験予約1件の許容CPA | 実際のCPA | 許容÷実際 |
|---|---|---|---|---|---|
| コース型 | 188,760円 | 30% | 約12,740円 | 8,000円 | 1.59倍 |
| 月額制 | 158,400円 | 45% | 約16,040円 | 8,000円 | 2.00倍 |
| 回数券 | 48,400円 | 50% | 約5,450円 | 8,000円 | 0.68倍(赤字) |
回数券は入会率がいちばん高いのに、許容CPAは実際のCPAを下回ります。回数券を主力にするなら、使い切った後に月額制へ移る割合まで計算に入れないと、広告は回りません。
コース型と月額制で、入会率だけを動かすとこうなります。
コース型:実際のCPA 8,000円 ÷(188,760円 × 30% × 75%)≒ 18.8%
月額制:実際のCPA 8,000円 ÷(158,400円 × 30% × 75%)≒ 22.4% → 入会率がこれを下回ると赤字
この図が言っているのは、広告だけ見て「CPA 8,000円は高いか安いか」は決められないということです。入会率が40%のジムでは許容CPAは約17,000円あり、まだ入札を上げられます。入会率が18%のジムでは、同じ8,000円が赤字です。広告の目標値を決める前に、直近3か月の入会率を契約の形ごとに出します。
体験価格は「入会1件の費用」で決める
体験の価格は、広告の数字をいちばん大きく動かす設定です。無料にすれば予約率は上がりますが、「とりあえず行ってみる」人が増えるので、来店率も入会率も下がります。さらに、体験1回にはトレーナーの時間(カウンセリングを含めて90分程度)がかかります。
同じ1,000クリック(広告費320,000円)で、体験価格を3通りにした時の比較です。体験1回のトレーナー人件費を4,500円として、体験料の収支も含めます(説明用の数字)。
| 体験価格 | 予約率 | 予約 | 来店率 | 来店 | 入会率 | 入会 | 体験料の収支 | 入会1件の実質費用 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 無料 | 5.5% | 55件 | 65% | 35.8人 | 22% | 7.9件 | −160,875円 | 約61,100円 |
| 3,000円 | 4.0% | 40件 | 75% | 30.0人 | 30% | 9.0件 | −45,000円 | 約40,600円 |
| 5,000円 | 3.0% | 30件 | 85% | 25.5人 | 34% | 8.7件 | +12,750円 | 約35,400円 |
入会1件の実質費用 =(広告費 − 体験料の収支)÷ 入会の件数
無料:(320,000円 + 160,875円)÷ 7.87件 ≒ 61,141円
管理画面の体験予約のCPAで見ると、無料が約5,800円、3,000円が8,000円、5,000円が約10,700円で、無料がいちばん良く見えます。入会1件の実質費用では順番が逆になり、無料は5,000円の約1.7倍です。入会の件数がいちばん多いのは3,000円なので、件数を優先するなら3,000円、1件の費用を優先するなら5,000円、という選び方になります。どちらにしても、無料を選ぶ理由は数字からは出てきません。
体験価格を変える時の手順
- 変える前の4週間の「予約・来店・入会」を契約の形ごとに記録しておく。
- 体験価格は広告文・ページ・予約フォームの3か所を同じ日に変える。どこかに古い価格が残ると、来店時の説明と食い違う。
- 変えた後も4週間以上、同じ形で記録する。体験から入会の判断まで1〜2週間かかる人がいるので、入会は体験日から14日後まで待って締める。
- 比べるのは予約のCPAではなく、入会1件の実質費用と入会件数の2つ。
キーワードは「目的」と「比べ方」で分ける
パーソナルジムの検索は、検索した人がどこまで決めているかで入会率が大きく違います。当社が組む時は、次の単位でキャンペーンを分け、キャンペーンごとに入会率を出します。
| キャンペーン | キーワードの例 | 検索した人の状態 | 見る数字 |
|---|---|---|---|
| 地域 | パーソナルジム ○○駅/パーソナルトレーニング ○○区 | 通える範囲で探している。いちばん入会に近い | 入会率と商圏内の比率 |
| 目的 | ダイエット パーソナル 女性/産後 パーソナルジム | 目的は決まっているが、ジムを比べ始めたところ | 来店率。目的に合う体験の内容になっているか |
| 料金 | パーソナルジム 安い/パーソナルジム 月額 | 料金で比べている。回数券・月額制での入会が多い | 契約の形ごとの入会率 |
| 店名(指名) | ジム名・ジム名の略称 | すでにジムを知っている | 止めた期間との差(増分) |
料金の検索は、予約のCPAが安く出やすい一方で、入会の多くが回数券や安い月額プランになります。前の章の計算のとおり、回数券の入会は許容CPAが低いので、料金のキャンペーンは契約の形ごとの入会で評価しないと、予算を寄せるほど利益が減ることがあります。
「パーソナルトレーナー 求人」「パーソナルジム 開業」は「パーソナル」を含むので、インテントマッチで拾われます。検索語句レポートで実際に出ていたら除外します。
配信地域は通う頻度から決める
週1〜2回通う業態なので、商圏は狭くなります。直近6か月の入会者の住所(郵便番号まで)と勤務先の最寄り駅を台帳から出し、累計で80%に達する範囲を配信地域にします。駅前の店舗は、住所よりも勤務先の最寄り駅の方が商圏をよく表すことが多いので、入会時に両方を聞いておきます。地域の設定は「所在地」(その地域にいる・よくいる人)を選び、「関心」を含めません。
広告文とページの表現で気をつけること
パーソナルジムには、鍼灸院や整骨院のような「書ける事項の一覧」はありません。その代わり、景品表示法と、体験から契約までの勧誘のあり方が問題になります。
- 体重・体型の変化:「2か月で−10kg」のような表示は、多くの人が同じ結果を得られると受け取られます。一部の成功例だけを見せる表示は問題例として挙げられており、「個人の感想です」「効果には個人差があります」という打消しの一文を足しても、受け取られ方を打ち消せないと判断された措置命令の例があります。
- 期間限定の価格:「今月だけ入会金0円」は、実際にその期間で終わる場合だけ書きます。毎月同じ表示を続けていると、有利誤認として問題になりえます。
- 体験当日の契約:国民生活センターは2026年10月、パーソナルトレーニングの相談が2021年度の495件から2025年度は1,457件に増えたと公表しました。無料体験の後に長時間勧誘されてその場で契約した、という相談が挙がっています。パーソナルトレーニングは一般にクーリング・オフの対象外とされているので、体験当日の契約を前提にした接客は、解約・返金・口コミの形で後から広告の採算に返ってきます。
3つ目は数字で見ると分かりやすくなります。コース型で、入会から1か月以内に解約して半額を返金する人の割合が15%なら、入会1件の累計粗利は188,760円から176,385円に下がります。入会率だけを評価の指標にすると、接客は入会率を上げる方向に寄っていきます。入会率と一緒に「1か月後に続いている割合」を見るのが、広告の採算を守ることにもなります。
広告文は「体験の中身」で組む
体型の変化を約束できない分、広告文で伝えるのは体験で何をするか・いくらか・どこにあるかです。当社が組む時は、見出し15本を次の4つの役割に割り振ります。
- 体験の中身:「体験は姿勢と体組成の測定から」「食事の記録の見方も説明」。何分で何をするかを具体的に書くほど、来店率が上がります。
- 価格と契約の形:「体験3,000円・当日の入会は不要」「月4回36,000円から」。体験の価格と、入会しなくてよいことを同じ見出しで伝えると、勧誘を警戒する人の予約が増えます。
- 場所と時間:「○○駅から徒歩3分」「平日22時まで」。仕事帰りに通えるかどうかは、入会の判断を大きく左右します。
- トレーナーと設備:「女性トレーナーを指名可」「完全個室」。実際に指名できる日数が少ないなら書きません。
説明文には、体験の所要時間と持ち物、予約の変更方法を入れます。検索した人が知りたいのは「行って何をされるか」なので、ここが曖昧なほど、予約しても来店しない人が増えます。
入札と予算は「季節」を分けて評価する
パーソナルジムの検索数は季節で動きます。一般に年明けと夏前に増えると言われますが、地域差があるので、キーワードプランナーの月別の検索数で自分の商圏の山を確かめます。
季節の影響が大きい業種で気をつけたいのは、入札の方式や目標値の良し悪しを、季節の山と谷をまたいで比べないことです。当社の自社運用で、手動入札と自動入札の期間を実績データから特定して比べた時も、季節要因を分けて評価したうえで、手動入札の期間だけ広告費の約2倍の売上(ROAS約200%)だったことが分かりました。山の月に切り替えた方式は、方式の効果ではなく季節の効果で良く見えます。
- 比べる期間は、前年の同じ月、または検索数が同じくらいの月にそろえる。
- 山の月は体験の枠が先に埋まる。枠が埋まった後のクリックは予約にならないので、トレーナーの空き枠と日予算を週ごとに合わせる。
- 谷の月に入札を大きく下げると、自動入札の学習がやり直しになる。目標値の変更は1回15〜20%までにする。
計測は「予約・来店・入会・契約の形」まで取る
広告の成果として数えるのは、体験予約の完了ページの表示です。そのうえで、予約フォームに広告のクリックID(gclid)を隠し項目で持たせ、台帳に次の4つを残します。
- 来店したか(無断キャンセルを含めて)
- 入会したか、入会日
- 契約の形(コース型・月額制・回数券)と契約額
- 1か月後・3か月後に続いているか
入会と契約額をクリックIDと一緒に広告へ戻せば、自動入札は「体験予約が取れる検索」ではなく「入会につながる検索」を学びます。入会の件数が月に数件しかない店舗は、まず台帳で入会率を出し、入札の目標値を入会率から逆算するだけでも十分に効果があります。
パーソナルジムの広告で実際に起きる落とし穴
よくある失敗と見分け方
- 無料体験で予約を増やして、入会が減る:予約のCPAは下がるので、管理画面では改善に見えます。入会1件の実質費用を毎月出していないと気づけません。
- 回数券の入会を、コース型と同じ1件で数える:入会件数は増えても、累計粗利は4分の1です。契約の形ごとに数えます。
- トレーナーの空き枠を超えて広告を出す:体験の枠が埋まった後の予約は、希望日に入れられず来店率が下がります。空き枠を週ごとに数え、予算に上限をかけます。
- 体験当日の契約率を目標にする:入会率は上がっても、1か月以内の解約・返金と口コミの悪化で、累計粗利と予約率の両方が下がります。
1つ目は特に多い失敗です。無料体験に切り替えた月は、体験予約のCPAが8,000円から約5,800円へ3割近く下がるので、レポート上は「大きく改善した月」になります。ところが入会1件の実質費用は約40,600円から約61,100円へ5割上がっています。体験予約のCPAと入会1件の実質費用を、同じ表に並べてレポートするだけで、この読み違いは防げます。
チェックリスト
- 入会1件の累計粗利を、コース型・月額制・回数券に分けて計算しているか
- 体験予約1件の許容CPAを、来店率と入会率から割り戻しているか
- 入会率を、契約の形・キャンペーンごとに直近3か月で出しているか
- 体験価格を、予約のCPAではなく入会1件の実質費用で比べて決めたか
- 体験価格を変えた日に、広告文・ページ・予約フォームの3か所をそろえたか
- 入会は体験日から14日後まで待ってから締めているか
- 広告文に、体重・体型の変化を約束する表現や、期間の実態がない限定表示が無いか
- 1か月後・3か月後に続いている割合を、入会率と一緒に見ているか
- 入札方式や目標値の比較を、季節の山と谷をまたがずに行っているか
- トレーナーの空き枠に合わせて、週ごとの予算に上限をかけているか
まとめ
パーソナルジムの広告は、体験予約の件数とCPAを見ている限り、うまくいっているかどうかが分かりません。入会1件の粗利は契約の形で4倍違い、許容CPAは入会率にそのまま比例します。体験価格ひとつで、入会1件の費用は1.7倍変わります。
必要な数字(来店率、入会率、契約の形、続いている割合)は、すべて店舗の台帳にあります。台帳を契約の形ごとにつけ、月に1回広告の目標値に戻す。それだけで、同じ広告費で取れる入会の数と質が変わります。
リスティング広告の運用代行
御社のジムの広告を「入会1件の費用」で組み直してみませんか。
当社のリスティング広告の運用代行では、キーワードの分け方、配信地域と予算の設計、入会・契約額を広告に戻す計測までまとめて担当します。運用手数料は広告費の10%(月額最低5万円・税別)。最初の60分の無料相談では、サービスの案内はせず、御社のアカウントの設定と数字を一緒に見ます。
この記事を書いたチーム株式会社Acquizeの運用チーム。自社でもWeb広告で集客する事業を運営しながら、受託先の予算運用を担当しています。記事中の考え方は、実際の運用で使っているものです。

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