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歯医者の広告|診療ごとの許容CPAと医療広告ガイドラインで組む歯科リスティング

歯医者の広告|診療ごとの許容CPAと医療広告ガイドラインで組む歯科リスティング

歯医者の広告、とくに検索広告は、始めること自体は簡単です。「○○駅 歯医者」で出稿すれば、翌日から予約が入ります。難しいのはその先で、急患の保険診療と、インプラントや矯正の相談を、同じ予約1件として扱ってしまうことです。払える広告費は診療によって3倍違い、書いてよい広告文の範囲は医療広告ガイドラインで決まっています。この記事では、歯科医院の経済性を数字で分解して診療ごとの許容CPAを出し、キャンペーンの分け方、商圏と地域設定、広告文とLPで守る規制、予約から来院・成約までの計測を、運用の手順として書きます。

この記事の結論

  1. 01許容CPAは診療ごとに出す。説明用の試算では、保険の急患は予約1件約7,600円、マウスピース矯正の相談は約23,000円。1つの目標CPAで全部を回すと、保険には払いすぎ、矯正には入札負けする。
  2. 02検索広告の広告文は、医療広告ガイドラインの限定解除が使えない。書けるのは診療科名・診療時間・所在地など広告できる事項だけで、自由診療の詳しい説明は、要件を満たしたLPで書く。
  3. 03キャンペーンは診療と商圏で分ける。急患は半径の小さい商圏で診療時間中だけ、自費は沿線まで広げて相談予約で数える。成果は予約ではなく来院と自費の成約まで追う。
目次

歯科医院の広告は、診療ごとに別の商売として計算する

歯科診療所は、令和5年の時点で人口10万人あたり全国平均53.7施設あります。1院あたり約1,860人です。人口密度が1km²あたり1万5,000人の都市部なら、半径1kmの中に約4.7万人が住み、同じ密度で歯科があれば約25院が同じ円の中にある計算になります。「○○駅 歯医者」の検索結果に、近隣の医院の広告が何本も並ぶのはこのためです。

この競争の中で予算を決めるには、まず患者1人がいくらの売上になるかを、診療ごとに出します。以下は説明用の仮の数字です。保険診療の売上は、窓口で受け取る自己負担分と保険者から入る分を合わせた医療費の総額で数えます。

保険の新患

治療の売上 + 定期検診の売上 + 自費への転換

1人の単価は小さいが、検診で数年通う。急患は「今日診てもらえるか」で医院を選ぶ。

自費の相談(インプラント・矯正)

治療費 × 相談からの成約率

1件は数十万円。複数院で相談してから決めるので、成約率は3割前後で置く。

保険の新患1人(5年)= 治療 5回 × 5,500円 = 27,500円

+ 定期検診(治療後50%が移行・年2回 × 6,000円・継続率 年60%)

+ 自費への転換(10%が10万円の補綴を選ぶ)= 約51,300円

1.4万2.9万4.3万0か月12か月24か月36か月48か月60か月初診からの月数1人あたりの累積医療費(円)保険の新患1人
図1 保険の新患1人の累積医療費(説明用の仮の数字)。初診から1年で約4.4万円、5年で約5.1万円。売上の半分以上は最初の治療で決まり、定期検診の積み上げは年々小さくなる。

図1のとおり、保険の新患は売上の大部分が最初の数か月で立ちます。広告で「とにかく新患を増やす」ことの価値は、検診に何割が移行し、何年残るかでほぼ決まります。検診への移行率が50%から30%に下がると、5年の売上は約1割減ります。広告費を増やす前に、受付で次回の検診予約を取っているかを確認するのはそのためです。

診療ごとの許容CPAを出す

売上から、技工料や材料費を引いた限界利益を出し、その何割を広告に回すかを決めます。予約1件あたりの許容額は、予約から来院までの割合と、相談から成約までの割合を掛けて出します。

許容CPA(予約1件)= 患者1人の売上 × 限界利益率 × 広告に回す割合 × 来院率 × 成約率

マウスピース矯正:800,000円 × 45% × 25% × 85% × 30% = 22,950円

診療患者1人の売上限界利益率来院率成約率許容CPA(予約1件)
保険一般(急患・近所)約51,300円70%85%—約7,600円
小児歯科約66,100円70%85%—約9,800円
インプラント相談350,000円50%80%35%約12,300円
マウスピース矯正相談800,000円45%85%30%約23,000円

小児歯科は、保護者や兄弟の来院につながる分を見込んで、保険の新患の1.6倍で置いています。インプラントの限界利益率が低いのは、インプラント体や技工料の原価が重いからです。御社の原価で置き直してください。

診療ごとの許容CPA(予約1件あたり)保険一般(急患・近所)7,636円小児歯科9,837円インプラント相談12,250円マウスピース矯正相談22,950円限界利益×広告に回す割合25%×来院率×成約率(説明用の仮の数字)
図2 診療ごとの許容CPA(説明用の仮の数字)。保険の急患と矯正の相談では、予約1件に払える額が約3倍違う。

この表で一番大事なのは、差の大きさです。全部を1つのキャンペーンにまとめて目標CPAを1万円に置くと、保険の急患には許容の約1.3倍を払い続け、矯正の相談では競合の医院に入札で負けます。しかも自動入札は件数を増やしやすい方に寄るので、予算はCPCの安い急患の検索に流れ、矯正の相談はほとんど取れない状態になりがちです。

キャンペーンは「診療×商圏」で分ける

許容CPAが違う診療は、キャンペーンを分けて予算と入札を別々に持ちます。分け方の基本形はこうです(商圏の半径は説明用の目安で、駅前か郊外かで変えます)。

キャンペーン語句の例商圏の目安配信時間数える成果
医院名(指名)医院名・院長名制限しない終日予約(観測用)
急患・一般○○駅 歯医者/歯が痛い 近く半径1〜2km・徒歩圏診療時間中のみ電話・当日予約
小児歯科○○市 小児歯科半径3km前後終日(フォーム中心)予約
自費(インプラント・矯正)インプラント ○○市/マウスピース矯正 ○○線沿線・半径10km前後終日相談予約→成約

急患は「今行けるか」で決まる

「歯が痛い」「詰め物 取れた」で検索する人は、今日か明日に診てもらえる医院を探しています。距離と、今電話がつながるかで選ぶので、診療時間外の配信はほぼ無駄になります。広告のスケジュールを診療時間(受付終了の30分前まで)に合わせ、昼休みと休診日は止めるか入札を大きく下げます。電話番号アセットの表示時間も同じにします。

夜間や休日に「歯 痛い 夜間」で検索する人は多いのですが、自院が夜間に対応していないなら、クリックされても患者にはなりません。対応しているなら、それを見出しの1本目に書きます。

自費は「比べてから決める」

インプラントや矯正を検討する人は、通院の回数より治療方針と費用で医院を選ぶので、片道30分程度の距離なら移動します。商圏を沿線まで広げ、語句に駅名・沿線名・市区町村名を掛け合わせます。相談から契約まで数週間かかるので、予約の件数ではなく、相談の来院と契約までを見て判断します。

地域設定の選び方

Google広告の地域設定は、急患・一般のキャンペーンでは「所在地」(その地域にいる、または定期的に訪れる人)にします。「所在地または関心」にすると、遠方からその地域を調べている人にも出て、来院できない予約が混ざります。自費のキャンペーンで、勤務先の近くの医院を探す人まで取りたい場合だけ、地域名入りの語句に限って「関心」を含める設定を検討します。

予算の上限は、お金より先に「検索の数」で決まる

歯科の検索広告は、商圏を絞るほど検索の数が少なくなります。急患・一般のキャンペーンでは、許容CPAに届く前に、表示できる検索が尽きることがよくあります。月の予算は、検索の数から積み上げて出します(数字は説明用の仮のものです)。

月の費用 = 月の検索数 × 表示できる割合 × クリック率 × CPC

急患・一般:1,500回 × 70% × 8% = 84クリック × 300円 = 25,200円(予約率12%で約10件・CPA約2,500円)

矯正の相談:1,000回 × 60% × 6% = 36クリック × 900円 = 32,400円(予約率4%で約1.4件・CPA約22,500円)

急患・一般はCPA約2,500円で、許容の約7,600円を大きく下回っています。それでも月2.5万円しか使えないのは、検索の数が上限だからです。この状態で予算を倍にしても、費用はほとんど増えません。インプレッションシェア損失率の(予算)がほぼゼロなら、予算ではなく、語句(症状・駅名・隣の駅)と商圏の広げ方を検討します。

一方、矯正の相談はCPAが許容ぎりぎりで、月1件強しか取れません。自費は1件の価値が大きい代わりに、月ごとのぶれも大きくなります。1か月で「取れなかった」と判断せず、3か月の合計で相談件数と成約を見るのが現実的です。月に1件のぶれは、件数が少ないうちは偶然の範囲に収まります。

広告文で書けること・書けないこと

歯科の広告は、医療法に基づく広告規制(厚生労働省の医療広告ガイドライン)の対象です。医院のホームページも規制の対象になります。運用で必ず押さえるのは、検索広告の広告文と、クリックした先のLPでは、書ける範囲が違うという点です。

検索広告の広告文は広告できる事項だけ、着地ページは限定解除の4要件を満たせば治療内容・費用・リスクまで書けることを示した図
図3 検索広告の広告文は、広告できる事項(診療科名・診療時間・所在地など)の範囲で書く。自由診療の詳しい説明は、限定解除の要件を満たしたLPで書く。

医療の広告は、法令で決められた事項しか広告できないのが原則です。例外として、患者が自ら求めて情報を得るウェブサイトなどでは、次の4つの要件をすべて満たすと、それ以外の事項も書けるようになります(限定解除)。

  • ① 患者が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト等であること
  • ② 表示内容について、患者が容易に照会できるよう問い合わせ先を記載すること
  • ③ 自由診療について、通常必要とされる治療内容・費用などを示すこと
  • ④ 自由診療について、主なリスク・副作用などを示すこと

検索広告やバナー広告は、検索した人に向けて表示される広告なので、1つ目の要件を満たしません。つまり広告文そのものは限定解除の対象外で、広告できる事項の範囲でしか書けません。広告文でよく見る表現を、書き換えるとこうなります。

よく見る広告文問題になる点書き換えの例
痛くない治療効果を断定する誇大な表現のおそれ表面麻酔を使用・土曜も診療
地域で一番の症例数他院と比べて優れているとする比較優良広告○○駅徒歩3分・平日19時まで
口コミ評価4.8/患者満足度98%患者の主観に基づく体験談・評価に当たるおそれ歯科・小児歯科・矯正歯科
今月限定 矯正30万円OFF費用を強調した広告。品位を損ねるおそれ矯正歯科の相談予約受付中(費用・期間・リスクはLPで)
審美歯科・インプラント科広告できる診療科名ではない歯科・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科

歯科で広告できる診療科名は「歯科」「矯正歯科」「小児歯科」「歯科口腔外科」の4つです。「審美歯科」は院内で使われていても、診療科名としては広告できません。見出しを15本作る時に、地域名・駅名・診療時間・診療科名・予約方法の組み合わせで書くと、規制の範囲に収まり、急患の検索にもそのまま答えられます。

LP側で抜けやすい点

  • 自由診療のページで、費用を「○万円〜」だけ書き、通常必要な治療の内容・期間・回数・追加費用が無い。
  • リスク・副作用をページの最下部や別ページにだけ置いている。費用の近くに書く。
  • 治療前後の写真に、治療内容・費用・リスクの説明が付いていない。説明の無い術前術後写真は、誤認させるおそれがある広告に当たる。
  • 患者の体験談や口コミサイトの評価を転載している。院のサイト上でも、患者の主観に基づく体験談は広告できない。

厚生労働省は、医療機関のウェブサイトを監視する事業(ネットパトロール)も行っています。広告文を作る前に、ガイドラインと、厚生労働省が公開している事例解説書に一度目を通しておくと、審査で止まる回数も減ります。

計測:予約ではなく、来院と成約まで追う

歯科の予約は、電話・自院のフォーム・外部の予約システムの3経路に分かれます。どれか1つしか計測していないと、キャンペーンの評価が大きくずれます。

① 電話は「通話の長さ」で数える

急患・一般のキャンペーンは、予約の多くが電話です。Google広告の電話番号アセットからの通話は、一定の長さ以上の通話だけをコンバージョンにできます(初期設定は60秒)。歯科では、予約の通話は1〜2分程度で終わることが多く、場所や診療時間を聞くだけの短い通話も多いので、受付の実際の通話を何本か計って、予約が成立する長さに合わせます。

② 外部の予約システムは、完了の計測を確かめる

予約システムが別のドメインで動いている場合、予約完了のページに広告のタグが置けず、予約が計測されていないことがよくあります。予約システム側に計測タグの設定欄があるか、無い場合はどの時点を成果にするか(予約ボタンのクリックなど)を決めます。ボタンのクリックを成果にした場合は、入札には使わず観測用にします。

③ 来院と自費の成約を突き合わせる

予約は来院して初めて売上になります。無断キャンセルが多い時間帯や経路があれば、そこへの入札を下げます。自費の相談は、問診票か予約の備考に「何を見て来院したか」を残し、月に1回、契約に至った患者と突き合わせます。自院のフォームで予約を受けているなら、広告のクリックID(gclid等)を保存して、成約をオフラインコンバージョンとして広告に戻せます。

入札:件数が少ないうちは、自動入札に任せきりにしない

歯科のアカウントは、予約が月に20〜30件程度のことが多く、自費の相談はさらに少なくなります。自動入札が学習に使える件数が足りないので、目標CPAの自動入札に切り替えた途端、CPCの安い語句に寄って件数だけ増える、ということが起きます。

当社の自社の広告運用でも、管理画面の履歴に残らない入札方法の切り替えを実績データから特定し、期間ごとに比べたところ、手動入札の期間だけ広告費の約2倍の売上(ROAS約200%)だったことがあります。季節の要因も分けて評価した結果です。件数が少ないアカウントほど、入札方法は「どちらが良いはず」で決めず、期間を区切って比べます。

  • 急患・一般:上限CPCを決めた入札で、検索語句を人が見て絞る。予約が月30件前後に届いたら、目標CPAを許容CPAより低めに置いて試す。
  • 自費:件数が少ないので、相談予約に診療ごとの価値(矯正なら22,950円など)を付けて、目標ROASで入札する方法もある。価値を付けておけば、インプラントと矯正を同じキャンペーンに入れても、払う額の差を自動入札が理解する。
  • 指名:医院名の検索は、広告を出さなくても自然検索から来院する人が多い。平均CPAが安く見えても、指名に予算を寄せる判断はしない。

歯科の運用でよくある落とし穴

  • 予約サイト経由の予約を二重に数える:歯科の予約サイトにも掲載していると、広告をクリックした人が予約サイトから予約することがあります。広告の成果と予約サイトの成果を足すと、実際の新患数より多くなります。月の新患数(初診の件数)と、各経路の予約数の合計を必ず並べて見ます。
  • 住所アセットを付けていない:急患の検索では、地図上の距離が医院選びを左右します。Googleビジネスプロフィールと広告アカウントをつなぎ、住所アセットを表示させます。プロフィールの診療時間が実際と違うと、広告の配信時間と食い違って、閉院中の電話が増えます。
  • 保険と自費を同じLPに送る:急患の人にインプラントの説明を見せても予約にはつながらず、自費の人に診療時間だけのページを見せても相談にはなりません。キャンペーンを分けたら、着地のページも診療ごとに分けます。

現場で使っているチェックリスト

  1. 許容CPAを、保険・小児・インプラント・矯正など診療ごとに出しているか
  2. 許容CPAの違う診療を、キャンペーンで分けているか
  3. 急患・一般の配信を、診療時間(受付終了前まで)に合わせているか
  4. 商圏の半径と地域設定(所在地/関心)を、診療ごとに決めているか
  5. 広告文に、比較優良・誇大・体験談・費用の強調に当たる表現が無いか
  6. 広告文の診療科名が、歯科・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科の範囲か
  7. 自由診療のLPに、治療内容・費用・期間・リスクと問い合わせ先がそろっているか
  8. 電話・自院フォーム・外部予約システムの3経路とも、予約を計測できているか
  9. 来院と自費の成約を、広告の経路と月1回以上突き合わせているか
  10. 入札方法の変更を、期間を区切って比べてから決めているか

まとめ

歯医者の広告は、同じ「予約1件」の中に、7,600円の価値の予約と23,000円の価値の予約が混ざっている商売です。まとめて運用すると、予算は安い方に流れます。

診療ごとに払える額を出し、キャンペーンを分け、広告文は広告できる事項の範囲で書き、成果は来院と成約まで追う。この順番で組めば、無理な表現に頼らなくても、広告費の使い道に根拠が持てるようになります。

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この記事を書いたチーム株式会社Acquizeの運用チーム。自社でもWeb広告で集客する事業を運営しながら、受託先の予算運用を担当しています。記事中の考え方は、実際の運用で使っているものです。

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