「無料カウンセリングの予約は月100件入っているのに、入金まで行くのは20件に届かない」。プログラミングスクールの広告の相談で、まず出てくる話です。原因はたいてい、広告の成果を「予約」で数えて、予約の単価で良し悪しを決めていることにあります。予約から入金までのあいだには、来ない人・話を聞くだけの人・クーリングオフで戻る人がいて、その割合は検索語句ごとに何倍も違います。この記事では、受講料と粗利から広告に払える上限を出し、予約・着座・申込・入金の4段階で検索語句を評価し、入金のデータを広告に戻すところまで、運用の手順で書きます。
この記事の結論
- 01見る数字は予約CPAではなく入金確定1件あたりの費用(CPO)。受講料44万円・粗利率55%のモデルなら、払える上限は入金1件あたり約81,000円、予約に換算すると約15,400円です。
- 02予約CPAがいちばん安い「料金・安い・無料」の検索は、予約から入金までの割合が低く、入金ベースでは最も高いことが普通に起きます。検索語句は「目的×検討段階」で分けて、入金まで追って評価します。
- 03給付金・クーリングオフ・転職実績の表示は、この業種固有の規制と計測の論点です。「最大80%」「実質○万円」を条件なしで書かないこと、入金の確定はクーリングオフ期間の後で数えることを決めておきます。
プログラミングスクールの広告は「予約」ではなく「入金」で数える
まず、何を数えるかをそろえます。スクールの広告で管理画面に出てくるのは、たいてい「無料カウンセリング(説明会・体験会)の予約フォーム送信」です。ところが売上になるのは、その先の入金です。
予約CPA
広告費 ÷ カウンセリング予約数
管理画面に出る数字。フォームが送信された時点で数えるので、来ない人も含まれます。
入金CPO
広告費 ÷ 入金が確定した受講者数
クーリングオフ・初期の解約を除いた、売上になった人の数で割った値。予算と入札はこちらで決めます。
月の広告費100万円、平均CPC 400円で2,500クリックのアカウントを例にします(数値は説明用に整えたものです)。
| 段階 | 件数 | 前の段階からの割合 | 1件あたりの費用 |
|---|---|---|---|
| クリック | 2,500 | - | 400円 |
| カウンセリング予約 | 100件 | 4.0% | 10,000円 |
| 着座(実施) | 70件 | 70% | 14,286円 |
| 申込 | 21件 | 30% | 47,619円 |
| 入金確定 | 19件 | 約90% | 52,632円 |
予約→入金の割合は19%です。予約CPAの1万円は、入金で見ると5万円台になります。この掛け算の段数が多いことが、スクールの広告をむずかしくしています。どこか1段の割合が5ポイント動くだけで、入金CPOは1〜2割動きます。

払える上限を、受講料と粗利から逆算する
「入金1件いくらまでなら払っていいか」は、受講料から逆算します。目安ではなく、自社の数字で必ず計算してください。
許容CPO = 受講料(税抜)× 粗利率 ×(1 − 解約・返金率)× 広告に回してよい割合
許容予約CPA = 許容CPO × 予約→入金の割合
受講料44万円(税込)の転職コースで計算すると、次のとおりです。
| 項目 | 値 | メモ |
|---|---|---|
| 受講料(税抜) | 400,000円 | 税込44万円 |
| 粗利率 | 55% | 講師・メンターの人件費、教材、決済手数料を引いた残り |
| 受講者1人の粗利 | 220,000円 | |
| 解約・返金率 | 8% | クーリングオフ・中途解約・転職保証の返金を合わせた割合 |
| 期待粗利 | 202,400円 | |
| 広告に回してよい割合 | 40% | 残りは固定費と利益 |
| 許容CPO(入金1件) | 80,960円 | 約81,000円 |
| 許容予約CPA | 約15,400円 | 予約→入金19%の場合 |
先ほどのアカウントは入金CPOが52,632円なので、平均で見れば余裕があります。ただし、平均に余裕があることと「予算をまだ足せる」ことは別の話です。予算を足して追加で取れる予約は、平均より入金率が低い層から来るので、最後の1件の値段で判断します。この考え方は増分CPAの記事で詳しく書いています。
粗利率と解約率は、コースによって大きく違います。短期の副業コース(受講料20万円前後)は1人あたりの粗利が半分以下になる一方、検討期間が短く入金率は高めに出ることが多い。許容CPOはコースごとに別々に出し、キャンペーンもコースごとに分けるのが基本です。転職コースと副業コースを同じキャンペーンに混ぜると、自動入札は単価の安い方の件数を増やしにいきます。
この業種の経済性:検討期間・給付金・商圏
同じ「教育サービス」でも、プログラミングスクールには独特の数字の動き方があります。業種名を差し替えると通じない部分なので、ここを押さえていないと運用の判断がずれます。
① 検討期間が長く、経路によって2倍以上違う
予約から申込までは、早い人で当日、迷う人は数週間かかります。とくに給付金を使う人は、制度の手続きが先に要るので、入金までの期間が長くなります。専門実践教育訓練給付金の場合、受講開始の1か月前までに、キャリアコンサルティングを受けてハローワークで手続きをする必要があります。給付金の検索から来た人の入金が、広告のクリックから1〜2か月後になるのは普通です。
Google広告のコンバージョン計測期間は最長90日、オフラインコンバージョンをクリックIDで取り込めるのもクリックから90日以内です。給付金ルートの人を入金で数えるなら、計測期間を90日に延ばしておく必要があります。初期設定の30日のままだと、遅く入金した人は広告の成果から落ちます。
② 給付金の「最大80%」は3段階の条件付き
2024年10月から、専門実践教育訓練給付金の上限は受講費用の最大80%になりました。ただし、80%は3つの条件を順に満たした場合の合計です。受講料44万円の講座(給付の対象講座と仮定)で計算するとこうなります。
| 条件 | 給付率 | 給付額 | 本人の負担 |
|---|---|---|---|
| 受講中・修了(6か月ごとに支給) | 50% | 220,000円 | 220,000円 |
| +資格取得等をして、修了後1年以内に雇用保険の被保険者として就職 | +20% | +88,000円 | 132,000円 |
| +修了後の賃金が受講前より5%以上上昇 | +10% | +44,000円 | 88,000円 |
給付には雇用保険の加入期間などの要件もあり、全員が対象になるわけではありません。広告文やLPで「実質8.8万円」と条件なしに書くと、50%しか受け取れない人にとっては22万円の負担なので、有利誤認を疑われる表示になります。書くなら「条件を満たすと最大80%」と、条件と上限をセットで書きます。制度の細部は改正が続いているので、表示する前に厚生労働省の最新の案内で確認してください。
③ 商圏はオンラインなら全国、通学なら校舎から片道45分
オンライン完結のスクールは全国が商圏ですが、その分、全国の大手スクールと同じオークションに入ります。通学型・ハイブリッド型は、校舎のある都市圏に絞ることで、大手と競合しない地域名の検索(「○○駅 プログラミング教室」等)を拾えます。配信地域の設定は「所在地」を優先し、「関心」は外す方が、通えない人のクリックを減らせます。
検索語句は「目的×検討段階」で分けて、入金まで追う
スクールの検索語句は、おおむね次のまとまりに分かれます。予約CPAで並べた順番と、入金CPOで並べた順番が、ほぼ逆になるのがこの業種の特徴です。広告費100万円の内訳の例です(数値は説明用)。
| 検索語句のまとまり | 広告費 | 予約 | 予約CPA | 予約→入金 | 入金CPO |
|---|---|---|---|---|---|
| 目的語(転職・副業)+スクール | 300,000円 | 30件 | 10,000円 | 26% | 38,462円 |
| 言語名(Python等)+スクール | 150,000円 | 12件 | 12,500円 | 25% | 50,000円 |
| 比較・おすすめ | 200,000円 | 22件 | 9,091円 | 20% | 45,455円 |
| 料金・安い・無料 | 180,000円 | 30件 | 6,000円 | 7% | 85,714円 |
| 給付金・補助金 | 90,000円 | 6件 | 15,000円 | 30% | 50,000円 |
| 独学・勉強法 | 80,000円 | 0件 | - | - | - |
予約CPAだけを見ると「料金・安い・無料」に予算を寄せたくなります。ところが入金で見ると、1件85,714円で、許容の81,000円を超えている唯一のまとまりです。逆に給付金の検索は予約CPAが15,000円と高いものの、手続きまで調べている人なので入金率が30%あり、入金CPOは許容内に収まります。
当社の自社運用でも、費用対効果が目標に届かないキャンペーンの検索語句を分類したところ、29%が価格・相場を調べる語句だったことがあります。この時は、その層を除外するのではなく、見出しを料金の目安と分割払いの条件が分かる文言に差し替えて、予約の手前で期待をそろえました。料金を調べる人の中にも入金する人はいるので、除外するかどうかは入金までのデータを見てから決めます。
まとまりの作り方
- Google広告の検索語句レポートを90日分出し、語句に含まれる単語で「目的」「言語」「比較」「料金」「給付金」「独学」「校名」の列を立ててフラグを付ける(スプレッドシートの
REGEXMATCHで十分です)。 - 予約の行には、フォームの隠し項目でクリックID(gclid)と、遷移時のキーワードを保存しておく。顧客管理ツール側で、その行に着座・申込・入金の日付を記録する。
- まとまりごとに、予約→着座、着座→申込、申込→入金の3つの割合を出す。どの段で落ちているかで、手を入れる場所が変わります(着座で落ちるならリマインド、申込で落ちるなら料金の伝え方)。
入金のデータを広告に戻す(オフラインCVと価値の設定)
まとまりごとの評価ができても、自動入札が学んでいるのが「予約」のままだと、入札はまた料金を調べる人を集めにいきます。入札に学ばせる成果を、入金に寄せる必要があります。予約のような中間地点を学習させた時に何が起きるかは、MCVで学習させるリスクの記事で書いています。
ただし、入金だけを成果にすると件数が月19件程度しかなく、学習の材料が足りません。そこで、段階ごとに「価値」を付けて、すべてを成果として戻す形にします。
各段階の価値 = 期待粗利 202,400円 × その段階から入金に至る割合
予約 = 202,400 × 19% ≒ 38,500円 着座 = 202,400 × 27% ≒ 54,600円
申込 = 202,400 × 90% ≒ 182,200円 入金確定 = 202,400円
入札を目標ROAS(コンバージョン値に対する広告費用対効果)にして、価値の合計で学習させます。ここで大事なのは、同じ人が予約・着座・入金と進んだ時に価値を二重に足さないことです。実務では、予約の時点で38,500円を入れ、着座・申込・入金のたびに「差額」を追加の成果として戻す方法か、最も進んだ段階の値だけを入金確定時に送り直す(コンバージョン調整で値を置き換える)方法のどちらかにそろえます。
目標ROASは、許容CPOの考え方から出します。期待粗利202,400円に対して許容CPO 80,960円なので、目標ROASは250%(202,400÷80,960)です。価値を粗利ではなく受講料で入れる場合は、その分だけ目標ROASを上げてください。
取り込みの運用ルール
- 取り込みは週2回以上。入金からアップロードまでが空くほど、学習に使われるのが遅れます。
- 入金の確定はクーリングオフ期間の後で数える。期間内に解約されたら、コンバージョン調整で取り消す。
- 転職保証の返金が発生したら、その受講者の価値も調整で下げる(何か月も後になるので、レポートでは別の列で管理する)。
この業種で気を付ける表示と契約の規制
スクールの広告文とLPは、景品表示法と特定商取引法の両方にかかわります。運用者が知らないまま文言を通すと、媒体の審査ではなく、後から行政や受講者とのトラブルで問題になります。
転職実績・価格の表示(景品表示法)
- 「転職成功率98%」のような数字は、分母(卒業生全体か、転職活動をした人だけか)、期間、転職の定義(正社員か、業務委託を含むか)を同じ画面に書きます。分母を絞った数字を条件なしで出すと、優良誤認を疑われます。
- 「通常価格○円→今だけ○円」の二重価格は、その通常価格で実際に販売していた実績が必要です。2024年7月には、資格の通信講座の二重価格表示に対して措置命令が出ています。キャンペーン価格を常時出している場合は、比較対照の価格自体が成り立たなくなります。
- 給付金の「最大80%」「実質○円」は、前の章のとおり条件と上限をセットで書きます。
契約とクーリングオフ(特定商取引法)
「パソコン教室」は特定継続的役務提供の対象で、期間が2か月を超え、支払総額が5万円を超える契約は、契約前の概要書面・契約書面の交付、8日間のクーリングオフ、中途解約のルールがかかります。オンラインのみのスクールがどこまで対象になるかはサービスの形で判断が分かれるので、法務の確認を前提に、広告の計測では「申込=売上」と扱わず、クーリングオフ期間の経過後に入金確定として数える運用にしておくのが安全です。
審査の不承認を減らす
- 「誰でも」「必ず」「確実に転職」など、結果を保証する言い回しは、媒体の審査でも行政の基準でも引っかかります。
- 当社の自社運用で不承認の理由を分類した時は、誇張表現による不承認が22件から1件まで減りました。広告文だけでなく、LP側の根拠の書き方を直すのが近道です。
広告文とLPで、予約の手前に期待をそろえる
入金率の低い予約を減らす一番安い方法は、予約の前に「料金・期間・学習時間」の3つを見せておくことです。カウンセリングで初めて料金を知って帰る人は、広告費の観点では、ほぼ丸ごと無駄なクリックです。
| 伝えること | 広告文の例(見出し30字以内) | 入金率への効き方 |
|---|---|---|
| 料金の目安 | 受講料は44万円・分割払い可 | 料金だけ知りたい人の予約が減り、予約→着座が上がる |
| 期間と学習時間 | 6か月・週15時間が目安です | 働きながら通えるかを自分で判断してから予約する |
| 給付金の条件 | 給付金の対象講座(条件あり) | 手続きまで進む人が集まり、入金率が高い層が増える |
| カウンセリングの中身 | 無料相談で学習計画を作成 | 「話を聞くだけ」の人と、計画を作りたい人を分ける |
この差し替えをすると、多くの場合予約CPAは上がり、入金CPOは下がります。管理画面の数字だけ見ている社内では「悪化した」と言われやすいので、差し替える前に、評価は入金CPOで行うと決めておきます。検証は、差し替え前後で同じ曜日構成の4週間ずつを比べ、入金の遅れの分(給付金ルートなら60日以上)を待ってから判定します。
LP側では、ファーストビューに料金と期間を出すかどうかで迷う相談をよく受けます。予約数を最大にしたいなら隠す方が予約は増えますが、ここまで書いてきたとおり、増えた分は入金率の低い予約です。料金はファーストビューの直下、予約ボタンより前に置くのが、入金CPOで見た時の基本形です。
よくある落とし穴と見分け方
① 予約フォームの項目を減らして、予約は増えたが入金が減った
フォームを短くすると予約CPAは下がります。ただ、そこで削った「目的」「希望の開始時期」「給付金の利用予定」の項目は、カウンセリングの準備と着座率に効いていた情報です。項目を減らした前後で、予約→着座の割合が10ポイント以上落ちていたら、戻す判断をします。
② 着座率が低いのを、広告のせいにする
着座率は広告より、予約から実施日までの日数とリマインドで決まる部分が大きい。予約から実施まで7日以上空くと、着座率ははっきり落ちます。予約の受付画面で直近3日以内の枠を先に見せる、前日と2時間前にリマインドを送る、の2つで改善するかを先に試します。
③ 校名・指名の検索の成果を、広告の手柄に数える
自校の名前での検索は、予約CPAも入金CPOも最も安く見えます。ただし広告を出さなくても自然検索から来る人が多いので、広告が生んだ増分は小さい。指名キャンペーンの成果は他のまとまりと混ぜずに、別に集計します。
④ 1か月のデータで検索語句を除外する
入金まで1〜2か月かかる業種で、1か月分の入金データで判断すると、給付金ルートのように遅く入金するまとまりを不当に低く評価します。判断は90日分、入金の遅れが出そろってからにします。
現場で使っているチェックリスト
- 許容CPOを、コースごとの受講料・粗利率・解約率から計算しているか
- キャンペーンをコース(単価)ごとに分けているか
- 予約フォームにgclidとキーワードを保存し、顧客管理ツールで入金まで追えるか
- 検索語句を「目的×検討段階」で分け、まとまりごとの入金CPOを出しているか
- 予約→着座→申込→入金の3つの割合を、まとまりごとに見ているか
- コンバージョンの計測期間を90日にしているか
- 入金はクーリングオフ期間の後で確定とし、解約・返金を調整で戻しているか
- 段階ごとの価値を二重に足さない形で取り込んでいるか
- 給付金・転職実績・二重価格の表示に、条件・分母・根拠を書いているか
- 指名の成果を、他のまとまりと分けて集計しているか
まとめ
プログラミングスクールの広告で問い合わせを増やすこと自体はむずかしくありません。料金や無料を前に出せば予約は増えます。むずかしいのは、増えた予約が入金まで届いているかを測ることです。
受講料と粗利から払える上限を出し、検索語句を入金まで追い、入金のデータを広告に戻す。この3つがそろうと、管理画面の予約CPAが上がった月でも、入金の数が増えていれば正しい判断だったと説明できるようになります。
予算運用(リスティング広告の運用代行)
予約ではなく「入金」で、広告を一緒に組み直しませんか。
当社の予算運用では、検索語句を入金まで追って評価し、入金のデータを広告に戻す計測まで担当します。運用手数料は広告費の10%(月額最低5万円・税別)。最初の60分の無料相談では、サービスの案内はせず、御社の数字を一緒に見ます。
この記事を書いたチーム株式会社Acquizeの運用チーム。自社でもWeb広告で集客する事業を運営しながら、受託先の予算運用を担当しています。記事中の考え方は、実際の運用で使っているものです。

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